有名クリエイターが製作したハイエンドな初音ミクをフィギュアで忠実再現! それなら、やっぱり金型が勝負。しかもベリじゃなく、NCの直彫りで。
はじめまして。アステックの伊藤拓です。当社は創業以来、精密加工をコアコンピタンスに、主に電気電子関連の機構部品の製造にまい進してきた企業です。そして、3D-GAN(3Dデータを活用する会)のメンバーでもあります。
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⇒ | 我が輩はQUMAである。製品名はまだない |
最初に申し上げておかねばならないことがあります。ハッキリ言って、私はモノづくりの素人です! これは間違いないです、ハイ。
私は大学卒業後電通グループに勤務し、広告主企業各社さんのさまざまな販促キャンペーンの企画・立案、各種ツールの製作、ケータイやネットを活用したキャンペーンシステムの開発に携わってきました。2008年、父親からの要請で家業のアステックを継ぐことに。早い話が“2代目社長”です。
企業規模や事業レイヤーはもちろん求めるべきところも、「イメージと物質」「情緒と効能」といったように、自分がこれまで身を置いた広告業界と製造業ではまるで違い、まさに“畑違い”の世界へ飛び込むことになりました。言ってみれば、「門外漢が社長になってしまった」ケースなわけです……。もちろん実務面では、オーソリティのようなスキルや経験値を持つ社員がいて、安心して任せていられるので、大変恵まれた環境にいると感謝しています。
前職では常に新しい表現や新しい仕組みについて企画・プロデュースし、製作・運用までを担務してきたので、「自分は、アステックという企業のプロデューサー兼ディレクターである」と私の立ち位置を定義すると、気持ち的には非常にシックリきました。そして、「“次のアステック”をイメージした新たな事業の確立」というミッションを自分に課したのです。
一方、私は“ガンプラ直撃世代”でもあります。立体形状を幾つものパーツに分割して、外観デザインを再現したりギミックを組み込んだりといった、プラモデルの設計思想がガキの頃から大好きでした(パーツ形状と組立手順の関係性に萌える!)。それもあってか、前職時代に企画作業をする際にも、現在当社で製品を開発製造していく際にも、「ゴールイメージから逆算し、構成因子に分解して考えていく」という、プラモデルを組み立てながら培ってきた「プラモ脳(と勝手に命名)」が非常に役立ってるかな、なんて考えています。
さて前置きが長くなりましたので、ボチボチ本題に入ります。
今回紹介するのは、間もなくリリースされる予定の当社の新製品、初音ミクのフィギュアモデルです。
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⇒ | 初音ミクとは(ニコニコ大百科) |
「初音ミク?」「フィギュア?」「機構部品のメーカーであるアステックが?」と皆さん頭の中が疑問符だらけになったかもしれませんが、「ハイ、そうなんです」と答えるしかありません。
実は社員数若干20数名の零細企業である当社が、初音ミクのフィギュアモデルを製作することになったのです! それは2009年のある出会いがスタートでした。
日本経済にも本格的にリーマンショックの影響が出始め、当社の既存事業(機構部品の製造)が打撃を被ったころ、私は3D-GANの事務所で「Tripshots」(トリップショッツ)を名乗る人物を紹介されました。
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⇒ | Tripshots氏について(ニコニコ大百科) |
「ボーカロイド(歌声合成技術)を使ったトランスっぽい楽曲を制作していて、ネットでは有名な人」という事前紹介だったわけですが……。私は童謡からテクノまでさまざまなジャンルの12インチレコードを買いあさり、「雑食性のレコードバカ」と呼ばれていたこともあるので、比較的、多くの音楽を聴いてきた方なんじゃないかと思います。また、表層的でしたが初音ミクのボーカル(?)による楽曲も聴いたことはありましたので、正直にいえば、その席で紹介された楽曲についてそれほど驚きはしませんでした。
しかし、同時に拝見させてもらったTripshots氏による楽曲『Nebula』のPV(プロモーションビデオ)には、見事に撃たれました。全編3次元CGで描かれた初音ミクがリップシンクロしている姿はまさにボーカロイド(ボーカル的なもの)でしたし、さらにそのCGデータも動画も全て1人で制作したというんです。
Tripshots〜「Nebula」(YouTube asahi.com 公式アカウントより) *詳しくは、「Tripshots」「Nebula」で検索してみてください。
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⇒ | クリプトン・フューチャー・メディア |
「世の中、スゴい人もいるもんだわ〜」と思ったものです。
そして、そのTripshots氏の、この一言からプロジェクトは動き出しました。
「このPVのミクのフィギュアを作ってほしいんです」
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