富士通は、東洋ビジネスエンジニアリング(B-EN-G)ブースにおいて、ARによる現場支援ソリューションを出展した。同社のソリューションは、生産ラインや設備などに富士通独自のARマーカーを付け、それをモバイルデバイスやウェアラブル端末で通してみると、アプリを通じて、作業指示や補助説明などを表示できるというものだ(関連記事:次世代モノづくりのカギはバーチャル化とビッグデータ活用にあり)。
ブースでは、富士通製のタブレットでのデモに加え、セイコーエプソンのモベリオでも利用できることを紹介した。また作業現場から直接、B-EN-Gの「MCFrame」の製造実績データに入力するデモなども行った。
富士通 ミドルウェア事業本部 商品企画室 マネージャーの河森健志氏は「まだまだ技術的に解決しなければならない問題は多いが、関心は高まっている。現在はマーカーなどに頼っているが、形状認識でさまざまな状況を把握し、最適な情報表示が行えるようにしていきたい」と話している。
モバイル端末による現場支援はDMS2013まででも大きなテーマの1つとなっていた。国内では、熟練技術者の多くが引退し、技術伝承やノウハウ継承に関する問題が発生している。結果として現場の技術力は低下傾向にある。また設備保全については、保守すべき設備などの数が増え、人員不足が深刻だという。一方、海外に目を移せば、多くの製造業が、新興市場攻略などで新しい地域に製造網やサービス網などを拡大中で、新たに雇用した現地の労働者たちの早いスキルアップが求められている。
これらの状況を支援する意味でもICTの活用による現場作業の効率化や支援には大きな期待が掛かっていた。モバイル端末への期待も大きかったが、実際には設備保全などでは一部使われ始めたものの、製造現場ではそれほど導入が進まなかった。手がふさがるということへの抵抗感があった他、ソリューションも充実しているとはいえなかったからだ。
しかし、ウェアラブル端末の登場で、これらの問題が解決する兆しが見え始めている。装着しているだけで通常と変わらない形で作業が進められるため、現場作業の邪魔にならないからだ。加えて、カメラやセンサーなどを利用した作業支援や、報告業務の簡略化などが実現でき、業務の大幅な効率化につながる可能性が生まれている。一方、ウェアラブル端末を装着することで現場の知見をセンシングしデータ化できるという利点もある。従来は体系知として共有できなかったノウハウを共有できる可能性も生まれるからだ。
従来のICTは製造業の業務を企業規模や部門規模で支援することはできていたが、現場の1人1人に届く支援はなかなかできていなかった。ウェアラブル端末の進化により、ついにICTの力を現場で活用できる時代が来たのかもしれない。
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