同社は、過去に数度売上高10兆円を掲げて阻まれてきた歴史がある。今回の目標とする2018年度での達成が不透明であるのは事実だ。2015年度までの中期計画は赤字の止血や成長への事業ポートフォリオの変革などを目標と掲げているため、基本的には「利益」を重視している。そのため、2013年度決算でも売上高は前年度比で増加しているものの、為替の影響分を引いた現地通貨ベースの売上高では、前年度比3%減と減少している。
津賀氏は「為替は業績を左右する大きな要素であり10兆円という目標に対しても大きな影響力を持つ。しかし10兆円に向けて計画を作っていくことが重要だ。現在の延長線上では失速して10兆円に届かない。その届かない部分に対し、伸び代がどこにあり、どこに重点的にリソースを掛けるのかということが非連続な成長に対して必要だ」と強調する。
また「10兆円を達成できた時の利益がどうなっているのか、については正直に言って分からない。しかし2014年度に限って言えば、10兆円の足場としてまず現地通貨ベースでの売上高減少に歯止めをかけることが大きなポイントとなる」(津賀氏)と述べている。
その意味で、成長の中核と位置付ける住宅向けや車載向けが好調を持続しているのは目標達成に向けて追い風となっている。「2018年度の10兆円に向け、車載機器事業や住宅機器事業を2兆円規模に育てると宣言した2012年度の段階では、両事業ともに1兆〜1.1兆円くらいの事業だった。今ではそれぞれ1割以上成長している」と津賀氏は語っている。
同社では為替の影響度がまだら模様で、アプライアンス社やエコソリューションズ社にとって円安はマイナス効果となり、AVCネットワークス社とAIS社にとってはプラス効果となる。“アベノミクス”により円安となり国内への再投資に注目が集まっているが、設備投資に関する方針は「大きく分けて2つの方針で進める」と津賀氏は話す。
1つ目は「どの地域のどの顧客に向くのかということで自動的に決定する」(津賀氏)というもの。例えばAIS社の車載関連商材では、パナソニック側のグローバル最適地生産の方針だけでは決められない問題が多くあり「自動車メーカーがどういう戦略を取るかでどこで生産するかが自動的に決まるもの。そういうものは、顧客の要望に合った体制を作る必要がある」と津賀氏は語る。
一方で、BtoC製品であれば、環境に応じた最適な生産体制を構築する必要がある。例えば白物家電では、海外生産が主流となっていたが「1ドル105円より円安になれば、日本で生産可能となる。実際に少し前から日本で生産する準備を進めている。条件さえ整えば日本に向けた製品は日本で作る」(津田氏)としている。
2つ目がブラックボックス技術だ。「ブラックボックス技術であり、モノづくりや技術など日本に残すことで価値があるものについては、顧客条件関係なく、日本に残していく」と津賀氏。これらの2つの方針のもとで設備投資を強化していくとしている。
「国内市場の縮小」「生産による差別化要素の減少」「国内コストの高止まり」などから、日本の生産拠点は厳しい環境に置かれている。しかし、日本のモノづくり力はいまだに世界で高く評価されている。一方、生産技術のさらなる進歩は、モノづくりのコストの考え方を変えつつある。安い人権費を求めて流転し続けるのか、それとも国内で世界最高のモノづくりを追求するのか。今メイドインジャパンの逆襲が始まる。「メイドインジャパンの逆襲」コーナーでは、ニッポンのモノづくりの最新情報をお伝えしています。併せてご覧ください。
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