グローバル化に積極的に取り組み、海外現地法人の設立などを続けてきた部品メーカーの北川工業。しかし“現地任せ”の経営であったことから「締めてみなければ黒字か赤字か分からない」状況が続いていたという。真のグローバル化を目指し、全拠点“見える化”を図った同社の取り組みを紹介する。
「羅針盤がない航海をしているようなものだった」――そう語るのは部品メーカーである北川工業 代表取締役社長の北川清登氏だ。同社は、顧客企業の海外進出などに合わせて積極的に海外進出を進めてきたが、システムが隔絶され、海外法人の売上高や利益、社内取引などがリアルタイムでは見えない状況になっていた。その状況を解消しようと乗り出したのが、同社社長の北川氏だ。くしくも北川氏は、海外に現地法人を設立して歩いた、同社の海外進出の立役者だった。
海外進出から真のグローバル経営へ――。経営基盤確立に取り組む北川工業の取り組みをレポートする。
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同社は1963年創立で2013年は創立50周年を迎えた歴史ある部品メーカーだ。
創立:1963年6月
資本金:27億7000万円(2013年6月26日現在)
代表者:代表取締役社長 北川 清登
本社:愛知県稲沢市目比町東折戸695-1
事業内容:コンピュータ、OA機器、AV機器、家電製品、自動車、航空機、建築物などに使用される、電磁波環境コンポーネントや精密エンジニアリングコンポーネントの製造・販売
Webサイト:http://www.kitagawa-ind.com/
もともとはプラスチック成形で成長。樹脂筐体やプラスチックファスナー製品、防振・緩衝・静音関連製品などを主要電機メーカーに導入してきた。現在は、その過程で必要となる材料開発などを通じ電磁波対策関連(EMC関連)製品群を伸ばしており、この2事業が二本柱となっているという。
顧客企業は電機関連メーカーが中心で、テレビや携帯電話端末、デジタルカメラ、ゲーム端末などで部品の採用を受けている。ただ、約5年前からは自動車向け分野を強化。ちょうどその直後にリーマンショックによる電機関連企業の大幅な落ち込みがあったことから現在は自動車向け関連の採用拡大に力を注いでいるという。
「中期目標としては電機向けが3分の1、自動車向けが3分の1、環境・医療向けが3分の1という売り上げ構成にするのが理想だ」と北川氏は語る。
電機メーカーにとっても、自動車メーカーにとっても、グローバルでの最適な製品供給体制の構築は欠かせないテーマだ。それに伴い、これらの完成品メーカーに部品を納入する部品メーカーにも、グローバルでの製品供給体制が求められる。北川工業も海外での販売拠点の設立と共に、生産体制を構築し、これらの完成品メーカーのグローバル化の動きに対応する体制作りを進めていった。
この海外拠点開拓の責任者となっていたのが、現在の社長である北川氏だ。「新興市場の成長や為替の問題など、産業構造として最終顧客となる完成品メーカーが海外生産を余儀なくされる状況にあった。これらに対応するために、海外の現地法人設立を進めていった。現地法人の設立に関連する各種手続きや場所の選定、倉庫の用意や備品棚の購入まで全部やってきた」と北川氏は当時の苦労を語る。
一方で、効率的な現地法人の設立と運営が行えるように、現地法人の運営は全面的に各地の拠点長に任せる方針を採った。そのために基幹システムも各地で採用を決め、それぞれがシステム連携取れない状況が生まれたという。「当時は拠点によってスタートした時期も、環境も、背景も異なり、無理にガバナンスを効かせるより、現地任せの方がうまくいく状況だった。さらに、日本からの輸出がほとんどであったため、輸出製品の管理を行っておけば、現地法人の経営状況もある程度把握できたという背景がある」と北川氏は話す。
しかし、徐々に環境は変化する。完成品メーカーの現地化はさらに進み、各地の工場の現地調達率は拡大。一方で、EMS企業が大きく成長し、部品の採用を得るためにも、最終顧客企業、EMS企業、これらの工場など、各地のポイントを押さえる必要が出てきた。そのため取引構造も複雑化が進んでいる。
例えば、米国企業が台湾のEMS企業に設計・生産を委託し、中国工場で生産するという場合であれば、北川工業の拠点としても米国、台湾、中国の3拠点が関連することになる。この場合、決済は米国企業との間で行い、部品は直接中国工場に納入するという契約になったとすると、北川工業の拠点間で「米国から中国」もしくは「米国から台湾、台湾から中国」という取引が発生することになる。
つまり、海外から海外への取引が多くなり、各拠点間取引(内部消去)を差し引きした時に「北川工業全体にとっての拠点の収益がどういう状況なのか」ということが、見えない状況だったというわけだ。
北川氏は「売上高については拠点からの報告で“見える”ようになっていたが、そのうち内部消去分がどれだけに達しており、全体での収益はどれだけになるのか、ということは四半期ごとの決算を締めてみないと分からなかった。黒字を見込んでいた拠点が赤字で、思ったような結果にならないこともあった」と当時の問題点を振り返る。
これらの状況から脱却するために取り組んだのが、基幹システムの統合を狙うERP導入プロジェクトだ。
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