新製品はOSに「Windows Embedded 8 Handheld」を採用した「FZ-E1」と、「Android 4.2.2」を採用した「FZ-X1」の2種類を用意している。Androidもラインアップと用意しているが「TOUGHBOOKやTOUGHPADの顧客のほとんどはWindowsベースでの利用となっており、Windowsが主力になると考えている」と原田氏は語る。
Windows Embedded 8 Handheldは、Windows Phone 8をベースとした業務用ハンドヘルド端末向けプラットフォームで、業務用途でさまざまなカスタマイズができることが特徴だ。今回のパナソニックでの採用は「世界で5番目のグローバルパートナーで、日本企業では初」(日本マイクロソフト 代表執行役社長の樋口泰行氏)となるという。
採用した理由についてパナソニック システムネットワークス ターミナルシステムビジネスユニット 商品開発室 室長 武藤正樹氏は「オープン化が進む中でこの業界でも今後大きく成長するプラットフォームだと見ている。そのプラットフォームを早くに採用することで先行者利益が得られる」と語る。
タブレット端末やスマートフォンは、日系企業が自社生産するケースは少なく、外部のEMS(受託生産サービス)企業に委託するケースが主流となっているが、新製品は当面、PCのマザー工場である神戸工場で行うという。神戸工場はマザーボードの実装工程から、組み立て工程まで一貫生産する他、品質保証部門、コールセンター部門、修理サービス部門など多彩な機能を併せ持つ生産拠点だ(関連記事:「レッツノート工房」に見るパナソニックの強さ――同質化競争を逆手に取れ)。
宮部氏は「TOUGHBOOKやTOUGHPADなどの生産実績のある神戸工場で生産をスタートさせる」と語る。ちなみに2014年2月中旬に投入した業務用の20型4Kタブレット「TOUGHPAD(タフパッド) 4K」も神戸工場で生産を行っている(関連記事:パナソニックの20型「4Kタブレット」は“メイド・イン・ジャパン”)。
同社ではこれらの機能を生かし、電気・ガス・水道、公共分野などに加え、製造現場や運輸・物流、小売などでの利用を推進していくという。また従来は米国での利用が多かったが、新製品ついては国内市場で先行して2014年6月に投入する計画だという。「従来は海外が多かったが5型サイズのモバイル性能を実現したことで国内での引き合いが強い。まず日本で投入して順次海外展開という形を取りたい」と原田氏は語る。これらの取り組みにより、2017年3月期(2016年度)までにTOUGHPAD全体で累計100万台の販売を目指すという。
同社では2013年9月に個人向けスマートフォンの新製品開発休止を発表。今回の新製品はタブレットというよりもむしろスマートフォンの枠組みの製品だがあえて「TOUGHPAD」シリーズとしたことについて原田氏は「顧客の要望を聞き開発する新製品の特性から考えてもスマートフォンの延長線上の製品というよりも、TOUGHPADの延長線上の製品であるという考えからだ」と語る。
また宮部氏は「決算発表会などでB2Bのスマートフォン投入は考えているという話をしてきたが、その製品が『まさにこれ』だ。個人用スマートフォンについては将来的に市場環境が変われば製品を投入するかもしれないが現時点では考えていない。規模ではなく1つ1つの顧客のニーズに応え、個人用スマートフォンとは異なるビジネスモデルを構築したい」と語っている。
「国内市場の縮小」「生産による差別化要素の減少」「国内コストの高止まり」などから、日本の生産拠点は厳しい環境に置かれている。しかし、日本のモノづくり力はいまだに世界で高く評価されている。一方、生産技術のさらなる進歩は、モノづくりのコストの考え方を変えつつある。安い人権費を求めて流転し続けるのか、それとも国内で世界最高のモノづくりを追求するのか。今メイドインジャパンの逆襲が始まる。「メイドインジャパンの逆襲」コーナーでは、ニッポンのモノづくりの最新情報をお伝えしています。併せてご覧ください。
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