ソニー、PC事業を売却してもテレビ事業を分社化してもなお、見えない光製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2014年02月07日 10時00分 公開
[三島一孝,MONOist]
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10期連続赤字見込みのテレビ事業は分社化

 一方、2014年3月期の黒字化を必達目標と掲げていたテレビ事業は、大幅に赤字額は圧縮したものの250億円の赤字が残る状況だという。新興国の市場成長の鈍化や通貨安などの想定外の要因があったとしているが、テレビ事業の通期赤字は2013年3月期まで9年連続で続いており、今回の発表により10期連続の赤字となる見込みだ。今後は高シェアを獲得している4Kテレビを中心に高付加価値製品への注力を進める一方で、事業責任を明確化し、より迅速な意思決定を実現するために、2014年7月をめどに分社化し、完全子会社として運営をするという。分社化したテレビ子会社の社長には、現在テレビ事業などを統括する業務執行役員 SVPの今村昌志氏が就く予定だという。

 分社化の意義について平井氏は「ソニーにはゲームのソニー・コンピュータエンタテインメントやモバイルのソニーモバイルコミュニケーションズのように主力事業で完全子会社として運営している前例がある。より現場に近い感覚でスピーディな判断ができる」と述べた。また将来のテレビ事業売却の可能性については「現在のところは計画しているものはないが、一般論としてどういう事業もさまざまな可能性を考慮するのは当然だ」と否定はしなかった。

テレビ 2011年に発表したテレビ事業の収益改善プランに対する現在の状況(クリックで拡大)

国内外で5000人を削減

 今回のPC事業、テレビ事業の再編に伴い、これらに関連する販売、製造、本社間接部門についても整理を進める方針。販売会社は、国、地域ごとの注力商品カテゴリーの厳選、間接機能の見直し、2016年3月期までに全体で約20%のコスト削減を行う。製造事業所についても、生産や他のオペレーションの集約を進める方針だという。

 現在、テレビの生産に関連している製造拠点は、愛知県稲沢市の稲沢サイト、中国・上海の上海索広映像、ブラジル・マナウスのSony Brasil Manausがある。PCの拠点は長野県安曇野市の長野テクノロジーサイトに既に集約済みだが、テレビ関連ではさらなる整理につながる可能性がある。

 また、ソニーの本社機能、間接部門についても、適性化を進め、2016年3月期までに約30%のコストを削減する。これらの一環として、2015年3月期末までに約5000人(国内1500人、海外3500人)の人員削減を行うという。

2014年3月期決算も1100億円の赤字転落

 今回の再編により、構造改革費用は200億円増加し全体で700億円とする。また合わせて電池事業の減損処理321億円、ゲーム分野のPC向けソフトウェアの評価減62億円などを計上したことにより、2014年3月期の当期純利益は2013年10月時点の300億円の黒字から、1400億円悪化し、1100億円の赤字となるという。またテレビ事業だけでなく、“必達目標”としていたエレクトロニクス事業全体の黒字化についても難しいようだ。

通期業績予想販売台数 2014年3月期通期の業績予想(左)と主要エレクトロニクス製品の販売台数見通し(右)

ソニーの“池”は厳しい競争ばかり

 ソニーでは「2015年3月期こそエレクトロニクスの黒字化を実現する」(平井氏)と強調しているが、実際に達成できるかどうかは外部要因に大きく左右され、不透明な状況だ。

 「投資が成果に結び付いている」(平井氏)とする重点3事業のモバイル、デジタルイメージング、ゲーム・ネットワークサービスだが、市場環境は厳しさを増している。PC事業苦戦の要因であるスマートフォン普及による影響を受け、デジタルイメージングではコンパクトデジタルカメラ、ビデオカメラなどの市場縮小が加速している。またゲーム機でも、2013年11月に海外で発売したPS4が2013年12月28日までに本体420万台、ソフトウェア970万本と好調なスタートを切った一方で、スマートフォンゲームの影響による家庭用ゲーム機の市場縮小が懸念されている。

 またこれらの影響の基であるスマートフォンやタブレット市場も、成長の鈍化が見え始めた一方で、競争は激化しており、予断を許さない状況だ。実際にソニーでは今回年間4200万台の目標販売台数を4000万台に引き下げており、苦しい状況が見える。

 ソニーでは2015年3月期以降もエレクトロニクスを中心に構造改革を進めていくとしており、構造改革費用は700億円を計上する。経営再建に向けた取り組みはまだ続く見込みで、本格復活への道のりはまだ遠い。

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