DITAコンソーシアムジャパンは、国内での「DITA」の普及・啓蒙に向けて、7回目となるDITAの総合セミナー「DITA Festa」を開催した。
DITAコンソーシアムジャパンは2013年10月23〜25日、第7回「DITA Festa 2013 Autumn」(以下、DITAフェスタ)を都内で開催した。「DITA
Festa」は、国内における「DITA」の普及・啓蒙が目的の総合セミナー。
「DITA」は「Darwin Information Typing Architecture」の略称で、技術文書(ドキュメント)の作成や発行、配布をするためのXMLベースのアーキテクチャだ。文書内のコンテンツを「トピック」という単位で小分けにして保有可能であることが特徴で、コンテンツを“部品”のように管理し“再利用”や“モジュール化”のようなことが容易に行えるのがメリットだ。例えばマニュアル文書の作成や翻訳などの際に力を発揮する。(関連記事:文書作成・翻訳コストを抜本的に低減するDITA活用の意味)。
DITAフェスタでは、DITAの使い方を教える入門講座や、DITA導入に伴うCMS(コンテンツ管理システム)の必要性など、実践的な内容が紹介されたが、今回はDITA導入を社内で展開するNECの事例内容について紹介する。
NECは、「DITA Festa 2012」でDITAの社内展開を宣言。この1年の間に徐々にDITA化プロジェクトを増やしてきた。当初はスモールスタートで進めてきたが、各部門でDITAへの要望が拡大。2012年末〜2013年春にかけては、6カ月で7500ページの文書をDITA化する大型プロジェクトも行ったという。
従来は汎用ワープロによる文書作成が行われてきたが、品質管理部門にとっては、スタイルのばらつき、開発部門にとっては翻訳工程が非効率、組版作業が大変、などの問題点が挙がっていた。これらを解決するためにDITAの採用を決定。「スタイルシートによる個々のばらつき解消」「トピック化による構造改善」「翻訳管理の効率化」「自動組版による仕上げ作業効率化」などの効果を求めた。
DITA導入に向けては、同社の開発者がXMLに精通していることもあり、基本的な文書作成は開発者が行い、DITA支援チームでは初期導入や文書のリライト、ヘルプデスクとしての役割を中心とする方針を決めた。
プロジェクトでは、まず対象ドキュメントの分析を行う。その結果、全体の約50%が一般的な説明である「リファレンス」、約20%が「操作の説明」、約20%が長文の「概念説明」、10%が「その他」だったという。この分析結果を基にDITA化の計画を組み立てた。
DITA支援チームとしてプロジェクトを担当してきたNECデザイン&プロモーション 第三マーケットコミュニケーション部 山崎光彦氏は「一般的な説明である『リファレンス』や『その他』については、プログラムによる自動変換でカバーできることが多いので、自動変換とリライトの組み合わせで対応することを決めた。また、『操作説明』はオペレーターが、『概念説明』はライターが作業を行う、という具体的な計画が立てられ、作業の効率化を行えた」と話す。
DITA化を推進する際には、CMSを活用するのが最も便利だが、CMSの導入にはコストが発生する。そのためNECでは、CMSは活用せずExcelで作成した「DITA化設計シート」で管理を行うようにしている。しかし、そのために幾つかの課題が出てきたという。
「今回は集中的に移行を進めた形だが、全体構造が見えない点やファイル検索が使いにくい点など、使い続けると多くの問題が発生しそうな状況だった。また複数拠点間でのコラボレーションや、改版、翻訳などの作業では、管理が困難だった。今後はこれらの要件からCMSをどうするか考えていく必要がある」と山崎氏は話している。
また、NEC ソフトウェア技術統括本部 鈴木和明氏は「社内でも導入期から普及期へと入り、より多くの人が関わるようになった。利用者はスキルの高い人だけではなくなってきているので、インタフェースの充実など、より分かりやすく、使いやすいことを重要視していく必要がある」と話している。
一方、DITAを活用した新たな取り組みも行っているという。NECでは、相手先ブランドの製品の製造受託や、NEC製品の製造委託など、OEMの活用を行っているが、そのOEMパートナーとのドキュメント管理基盤をDITAに統一し、業務効率化の検証を行っているという。
鈴木氏は「OEMを活用する場合、マニュアルなどは自社独自の部分は少ない。DITA活用により、自社独自の部分だけを変更することができると、文書作成に関するコストを大きく削減できる。業務の枠組みを整備する必要性はあるが、うまく活用すると効果を発揮できる」と話している。
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