S&OPで身につける製造業の7つのパワーとは?――スティールウェッジ見えるぞ! 私にも収益性が見えるッ!

スティールウェッジはS&OPの認知度向上と、自社のクラウドソリューションの普及に向けS&OP(グローバル製販超同期化)セミナーを開催した。

» 2013年10月21日 15時15分 公開
[三島一孝,MONOist]

 クラウドベースのS&OP(セールス・アンド・オペレーションズ・プランニング)ソリューションを展開するスティールウェッジは2013年10月17日、S&OPの価値や海外事例を紹介するセミナーを開催した。

 S&OPとは、経営層と、生産や販売などの業務部門が同じ情報を共有し、経営陣の意思決定速度を高める仕組み。サプライ・チェーンに財務情報などを結び付けることで、財務的な価値を明確にし、より正確で素早い経営判断を下せる。生産量を調整する“製販調整”だけでなく、財務やマーケティング、製品開発なども加えることで経営全体の計画を各部署に落とし込み「1つの数字」を基に経営できるようにすることを特徴としている。一方で現場層での取り組みが企業財務にどれだけ貢献しているかを可視化できることで現場意識の向上にもつなげられることも利点だ。

S&OPの普及が進まぬ日本

経営コンサルタントで中央大学大学院特任教授である松原恭司郎氏 経営コンサルタントで中央大学大学院特任教授である松原恭司郎氏

 S&OP自体は、20年以上前に提唱された概念で、既に欧米では多くのグローバル企業で導入が進んでいるが、製造部門の現場の力が競争力の源泉となってきた日本企業では定着が進まず、導入が広がっていない状況が続いている。

 基調講演として登壇したのは、MONOistでも数々の連載を担当していただいている経営コンサルタントで中央大学大学院特任教授である松原恭司郎氏。松原氏はS&OPの歴史やシステムとしての発展を説明するとともに、S&OPによって得られる「グローバル調整力」「俊敏力」「戦略実行力」「財務評価力」「クロスファンクショナル力」「組織学習力」「IT活用力」の7つのパワーについて紹介した。



 松原氏は「S&OPはITシステムではなく経営のプロセス。考え方を導入しそれに対する仕組みを作っていくことで、戦略展開や財務、顧客満足度、サプライチェーンなどあらゆる部分に影響を及ぼすことができる。例えば、S&OPにより全世界の各地域で分断したバリューチェーンをつないで可視化し、変化に俊敏に対応できるようになる。為替リスクや市場の変化、原材料の高騰などの他、自然災害やテロ、労働争議などがあった際にも正しい意思決定を円滑に行える」と話す。

7つのパワー俊敏力 S&OPで強化が期待される企業の7つの力(左)と俊敏力が求められる理由(右)(出典:「S&OP入門」松原恭司郎、日刊工業新聞社)(クリックで拡大)

 松原氏はさらに「また、日本企業がS&OP導入を考える際に、製品に関連するハードウェア面での効果について意識するところが多いが、ソフトウェア面での効果についてあまり考えていないことが多い。S&OPは経営面での戦略計画と、実際の業務計画を連携させ、計画数値が多重化することを防ぐことができるため、1つの計画をあらゆる部門が共有して戦略実行力を高めることができる。そういう中長期的な視点での間接的な効果が重要になる」と強調。プロセスやツールだけでなく、人の行動様式まで踏み込んだ改革の必要性を訴えた。

日系企業の欧州販社に導入した事例

スティールウエッジ代表取締役社長津村謙一氏 スティールウェッジ 代表取締役社長 津村謙一氏

 続いて、スティールウェッジが自社のソリューションと事例を紹介した。スティールウェッジはS&OP関連ソリューションをクラウドベースで提供し、グローバルでは、ダウケミカルやレノボ、エマーソン・エレクトリックなど全世界で約1000社の顧客を抱えているという。2012年7月に日本法人を設立し、日本企業に向けた本格的な提案を進めている。既に日本法人でも2件の受注を獲得し、1件は無事に本格稼働を開始することができたとしている。

 同社が日本法人として初めて導入した企業は、日系事務機器メーカーの欧州部門で、導入理由については、納期順守などのCSの問題の改善と欧州販社の経営効率改善の2つのポイントだったという。

 日本法人スティールウエッジの代表取締役社長である津村謙一氏は「調査会社ガートナーが示したS&OPの4段階の習熟度において、日系企業はほとんどがステージ1かステージ2。海外のグローバル企業がステージ3前後であることを考えると、この分野では遅れているということがいえる」と指摘する。

新興市場開拓に大きな力

 実際には導入に当たっても「非常に苦労した」と津村氏は語る。「中長期的で経営面での計画実行を主眼としたS&OPと、日々の生産・在庫管理が主眼のPSIとの役割が不明瞭になることが多く、職責の明確化と教育に約8カ月と、多くの時間をかけた。また、活用可能な鮮度を持ったデータが不足しており、これらの準備も必要だった。結果としてキックオフから本稼働まで1年半かかった」と津村氏は話す。

 しかし結果として大きな効果を発揮することが出ているという。「倉庫間の無駄な移動や過剰在庫が抑えられた他、アフリカ市場など新規市場の開拓に活用したことで、新興市場担当部門の売り上げを大幅に伸ばすことに成功した」(津村氏)。

 津村氏は「ビジネスモデルによってもS&OPが効果を発揮できるかできないかは変わってくる。国内だけであったり、ハイエンド製品だけを扱っている場合はそれほど必要ないかもしれない。しかし、グローバルで一般製品を扱う場合では、大きな効果が見込まれる。日系企業にもS&OPの価値が定着するよう訴えていきたい」と話している。

S&OPのアプローチ S&OPのフェーズ別アプローチの例(出典:スティールウェッジ)(クリックで拡大)

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