「第20回ITS世界会議東京2013」の展示会場では、国内自動車メーカーがそろって、ITS(高度道路交通システム)を活用した安全システムや自動運転技術への取り組みを披露していた。いずれも2015〜2020年以降にかけて市販車への搭載が想定されている。
ITS(高度道路交通システム)技術の国際会議「第20回ITS世界会議東京2013」(2013年10月14〜18日)が、「Open ITS to the Next」をコンセプトに東京ビッグサイトで開催された。展示会場では、「交通安全・渋滞解消」、「次世代モビリティとエネルギマネジメント」、「スマートフォンやタブレット端末を用いた新サービス」などをキーワードに数多くの次世代技術が展示された。本稿では、国内自動車メーカーの展示ブースで披露された新技術を中心に紹介する。
ホンダは、Wi-Fi通信を用いた協調型安全支援技術をパネル展示で紹介した。同社は新型「アコード ハイブリッド」や大型バイク「NC700X」、電動カート「モンパル」を実験車として用い、協調型安全支援技術の検証を進めている。このシステムは、GPSとWi-Fi通信の機能を搭載したモジュールやスマートフォンを自動車やバイク、電動カートに搭載し、歩行者はスマートフォンを持ち歩く。あるWi-Fi端末が他のWi-Fi端末の通信カバーエリアに入ると、端末同士が位置情報を交換して、カーナビや車載ディスプレイ、スマートフォンに互いの存在を知らせる仕組みだ。
例えば、自動車が交差点に進入しようとする時に、スマートフォンを持った歩行者が横断歩道を渡ろうとしていれば、自動車のカーナビに歩行者の存在が表示される。このサービスを利用すれば、ドライバーが目視で確認できない場合でも、近くに歩行者がいることを事前に察知できる。バイクなどの存在も同様に認識することが可能だ。「周辺環境にもよるが、Wi-Fi通信のカバー範囲は約100m」(説明員)という。
三菱自動車は、スマートフォンを活用した運転支援システムなどの事例を紹介した。ETCなど現行のITSインフラを用いながら、スマートフォンのハードウェアのパフォーマンスや最新のアプリケーションを活用するのが狙い。
今回パネル展示したシステムでは、路車間通信を行うための「ITSオンボードユニット」と「車載ディスプレイ」およびスマートフォンを連携させている。「ITSオンボードユニットで受信した渋滞や事故などの交通情報は、いったんスマートフォンに送られ、車載ディスプレイにはスマートフォンで処理された情報だけが表示される。表示する情報の優先度は、スマートフォンのナビゲーションアプリがその重要度合を判断してを決める」(説明員)。渋滞情報であれば表示の優先度は「高レベル」、ナビゲーションアプリのルート案内は「中レベル」で、一般的な交通情報であれば「低レベル」といった具合だ。
もう1つのスマートフォンの活用事例として、遠隔操作による電気自動車(EV)への充電制御をデモ展示した。まず、スマートフォンのアプリを使って、電力の供給状況や時間帯に応じて変動する電気料金をグラフ表示で確認することができる。利用者は電力料金が最も安価な時間帯を選んで、画面の「充電する」ボタンを押す。そうすると「今すぐ充電」、「充電予約」、「充電停止/予約キャンセル」が画面に表示され、該当項目にチェックマークを入れれば設定は終わる。その後、スマートフォンから自動車に制御信号が送られる。「制御信号は3G/LTE通信を使ったSMS(ショートメッセージサービス)として送信される。遠隔操作で充電制御やカーエアコンのオンオフ制御を行える」(説明員)という。
富士重工業は、ステレオカメラを用いる運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」をベースに、インフラ協調型と自律型の両面から先進安全システムへの取り組みを紹介した。
まず、2014年に製品化する予定の「次世代アイサイト」では、ステレオカメラの望遠化と広角化に取り組む。現行のアイサイトに比べて、それぞれ約40%も認識できる範囲が拡大する。これによって、対象物を早期に確認できるようになる。また、自動ブレーキで衝突回避可能な相対速度(自車と対象物の速度差)が、現行では時速30kmとなっているが、これを時速50kmまで引き上げる。さらに、ステレオカメラのカラー化によって、赤信号や先行車両のブレーキランプなどを認識しての運転支援も行えるようになった。この他、「AT誤後進抑制制御」や「危険回避アシスト」、「レーンキープアシスト」などの機能を新たに追加する計画だ(関連記事:次世代「アイサイト」は赤信号を認識できる、速度差50kmでも衝突回避が可能に)。
2020年代の実用化を目指す「アイサイト202x」では、自動運転も視野に入れている。「次世代アイサイトで実現した、広視野化と望遠化、ステレオカメラのカラー化を組み合わせれば、より安全で滑らかな運転が行え、実際の交通状況に合わせた走行制御が可能となる」(説明員)と話す。
加えて、ステレオカメラによる車両前方の認識だけでなく、車両後方も含めた360度のセンシングを行い、自車の周囲に存在する自動車やバイク、自転車、方向車など、あらゆる立体物の同時認識を実現させたい考えだ。
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