「最後のフロンティア」として将来性に期待が集まるアフリカだが、現在の状況は企業として進出するにはリスクが大きい。将来性とリスクのバランスをどう取るべきなのか。日本貿易振興機構の高崎早和香氏に聞いた。
製造業にとって「最後のフロンティア」とされるアフリカとどう向き合うべきか、を取り上げた本稿。前編では、アフリカ経済の現状と日本企業の進出状況を紹介した。後編では、アフリカの抱える問題点と、その中でも進出するメリットが得やすい国について、日本貿易振興機構(JETRO、ジェトロ)海外調査部 中東アフリカ課の高崎早和香氏へのインタビューを通じてお伝えする。
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前編の「アフリカは日系製造業にとってはまだ暗黒大陸なのか」では、成長するアフリカ経済の現状と、その一方で日本企業が進出に後れを取っている状況などについて言及した。しかし、アフリカの現在の状況はビジネスを展開するには非常に多くのリスクが存在し、日本企業が慎重な姿勢を示すのも一面においては当然なことだ。
一口にアフリカと言っても風土や言葉、文化も異なる54カ国が含まれており、その状況はさまざまだ。名目GDPで見ると、1位の南アフリカ共和国は、53位のサントメ・プリンシペの1455倍と格差は非常に大きい。さまざまな歴史的な問題も抱えており、ビジネス展開するには、これらの状況をよく理解する必要がある。
アフリカは、北部のエジプトやアルジェリア、モロッコなどの国々とサハラ砂漠以南の“サブサハラ”地域とで分けて考えるケースが多い。サブサハラ地域には実に49カ国もの国々が存在するが、アフリカで成長が顕著なのはこのサブサハラ地域だ。
高崎氏は「サブサハラ地域は成長の余地が大きいが、共通して政治的・経済的基盤が脆弱(ぜいじゃく)で、ビジネスを行う上で予期しない問題が発生する可能性がある。比較的安定していると見られていた北アフリカについても、アルジェリアのテロ事件など危険性が高まっており予断を許さない状況だ」と話す。
実際にJETROが行ったアフリカ進出企業へのアンケートでは、アフリカで事業を行う上での問題点1位が「政治的・社会的安定性」となっている。2012年と2007年を比較して、ほぼ全ての項目が改善傾向を示しているにもかかわらず「政治的・社会的安定性」については、問題点とする回答はむしろ増加している。また製造業にとっては部品や材料などの現地調達が難しいことも問題点として挙がっている。
高崎氏は「治安などの問題だけではなく、ビジネス基盤としてのバランスが悪いことが日系企業が二の足を踏む要因となっている。例えば、アンゴラなどは比較的治安がいいが、数年前まで内戦をしていたため、質のいい労働力が確保できない。またアフリカの中では高い進学率を誇っていたジンバブエは、ハイパーインフレによる経済危機で事実上国家が破産した状況だ。ほぼ全ての国がビジネスを揺るがしかねないリスクを抱えていると言っていい」と話す。
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