これだけは知っておきたい! 「ファイナンスの勘所」目指せT字型人材! 中小企業エンジニアのスキルアップ(6)(1/3 ページ)

中小企業にとって、資金繰りは会社の死活問題! 経営者だけではなく、現場担当者もファイナンスの基本をしっかり理解しておきたい。

» 2013年05月24日 11時00分 公開
[平阪靖規/MPA所属 中小企業診断士,MONOist]

 「今期は利益が出たはずなのに、思った以上に手元資金が残ってない……」「今月も仕入のお金の支払日が近づいてきた……。お金をどうにか工面しないと」――中小企業の経営者にとって、資金繰りは会社の死活に直結する問題です。資金繰りに失敗すると、場合によっては会社が倒産ということも。会社の存続にかかわる問題である以上、現場担当者の皆さまもしっかりとした知識を持っておきたいところです。

 そこで、本稿では、経営者はもちろんのこと現場担当も知っていたいファイナンスの基本知識について分かりやすく解説いたします。ファイナンスを知ることで、お金の流れも見ることができるエンジニアを目指しましょう!(図1)

図1 ファイナンスの基本を学ぶと……?

ファイナンスとは……

 ファイナンスとは、会社が事業をするために必要な資金を調達することを意味しています。資金調達には、株式発行や銀行からの借り入れなど、実施方法によっていくつかのパターンがあります。本稿では、「ファイナンスの勘所」ということで、大きく2つの内容に絞って基本的な内容を解説します。

  1. 銀行借入をする際に知っておきたい3つのポイント
  2. お金の流れを見える化して、資金繰りを把握する方法

 1つ目の「銀行借入をする際に知っておきたい3つのポイント」では、「いざ資金調達をしなければいけなくなった」という初めて銀行融資を受ける方を想定して解説します。

 2つ目の「お金の流れを見える化して、資金繰りを把握する方法」では、会社のお金の流れに着目して、会社経営をする上で最低限知っておきたい資金繰りに関する解説および資金繰り管理表について解説します。

 いずれの内容も経営者のみならず、現場担当者もT字型人材を目指す上では知っておきたい内容となっています。最初は、聞き慣れない言葉や難しいと感じる部分があるかもしれません。ただ、できるだけ容易に解説していきますので、まずは気軽に本稿をお読みいただきたいのです。ファイナンスに興味を持たれた方は、専門的な書籍などを使って継続的に勉強をしてみてください。

 お金の流れを知ることができれば、会社の経営が見えるようになります。

 それでは早速、具体的な「ファイナンスの勘所」について解説します。

1.銀行借入をする際に知っておきたい3つのポイント

 皆さまは、「銀行からお金を借りる」と聞くとどのような印象を持ちますか。「お金を借りるのは難しそう」「銀行って、しきいが高そう」「痛くもない腹を探られる気がして、何だか銀行の方と付き合うのはちょっと……」など、人それぞれイメージをお持ちだと思います。しかしながら、決して銀行でお金を借りることは難しくありません。というのも、銀行も「お金を貸したい」と考えているからです。

 銀行の仕事は、集めたお金を企業に貸すことです。貸した利子が銀行にとってのもうけとなりますので、できることであればどんどんと貸したいと考えています。しかし「お金を貸す」ということは、銀行もお金を返してもらわなければなりません。そこで、お金をきっちりと返してもらえるかどうかを、さまざまな情報から判断する必要があります。つまり、銀行からお金を借りるときは、銀行に対して「ちゃんとお金を返すことができますよ」という情報を与えることが大切になります。

 「ちゃんとお金を返す」、すごく当り前のことです。しかし、この「当り前のこと」ができていないために、融資を受けることができないという事態が発生するわけです。

 「当たり前のこと」、つまりこれが銀行借入をする際に知っておきたい3つのポイントになります。3つのポイントを実行するだけで、銀行から資金を借り入れて、ビジネスの成長につなげることができるようになります(図2)。

図2 3つのポイント

 それでは、早速3つのポイントを見ていきましょう。銀行借入をするために知っておきたい3つのポイントは、以下の通りです。

  1. 何のためにいくらお金が必要なのかを明確にする
  2. そのお金をどのように返すのかを明確にする
  3. 1、2を明確に数字で説明する

 それぞれの項目については、私が実際に資金調達支援をした事例を通じてみていきます。事例の舞台は、製造業が舞台ではありませんが、やるべきことは同じです。ぜひ、事例を通じて、銀行借入までのイメージを持ってください。

 まずは、今回の事例の舞台を紹介します(内容は、一部変更しています)。

A社のお寿司屋さん事例

 A社はこれまで、店舗への寿司職人の紹介や、店舗のコンサルティングを実施してきました。従って、A社は腕のたつ職人の強力なネットワークを持っていました。また、さまざまなネットワークを持つため、一流の食材を仕入れるルートも持っていました。これまで実際に店舗を運営することはありませんでしたが、ある日、A社社長の元に良好な店舗物件の情報が転がり込んできました。「これは、店舗出店の千載一遇のチャンス!」と考えたA社社長は、満を持してお寿司屋さんの店舗を出店することになりました。店舗を出店するためには、それなりにまとまった資金が必要になります。そこで、銀行からの借入をすることを検討しました。

 しかしながら、A社はこれまで銀行にお金を借りた経験はありません。そこで、資金調達のためのコンサルタントとして中小企業診断士の元に相談があり、私も参加することになりました。



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