Volvo Cars(ボルボ)は、フライホイールを用いたKERS(運動エネルギー回生システム)の開発成果を発表した。フライホイールに蓄積したブレーキエネルギーを使って、発進時の出力を最大80馬力向上できる。燃料消費量を最大で25%削減する効果も得られたという。フライホイールKERSの動作イメージ映像も公開されている。
Volvo Cars(ボルボ)は2013年4月25日(欧州時間)、フライホイールを用いたKERS(運動エネルギー回生システム)の開発成果を発表した。ターボチャージャ付き4気筒エンジンを搭載する車両にこのフライホイールKERSを適用したところ、ターボチャージャ付き6気筒エンジン搭載車両と比べて、同等の走行性能を持ちながら、燃料消費量を最大で25%削減できたという。
ボルボは、2012年の1年間、前輪駆動タイプのセダン「Volvo S60」の後輪車軸にフライホイールKERSを搭載し、公道走行試験を行うなどしてきた。フライホイールKERSは、減速時のブレーキエネルギーを、フライホイール内部のローターを最大6万rpm(回転/分)回転させる力に変換して蓄える。車両を発進させる際には、このローターの回転力を後輪車軸に伝えて駆動力として再利用できる。
フライホイールKERSを搭載する試作車は、ブレーキペダルを踏み込んでブレーキエネルギーを蓄積するときと、停車状態からアクセルを踏み込んでフライホイールKERSの駆動力を使って発進するときに、エンジンを停止する仕組みになっている。同社によれば、これによって、NEDC(New European Driving Cycle:新欧州ドライビングサイクル)における運転時間のうち半分についてエンジンを動作させずに済んだという。
ローターの回転力を駆動力として再利用するフライホイールは、電力を蓄積する二次電池とは異なり、エネルギーを長時間蓄積できない。このため、フライホイールKERSは、停車と発進を繰り返すのでエネルギーを長時間蓄積する必要がない、都市部での燃料消費量削減に大きな効果が得られるアイドルストップシステムに最適である。その一方で、既存のアイドルストップシステムと異なるのは、発進時の駆動力として利用できる点である。フライホイールから後輪車軸に最大80馬力の出力を加えられるので、加速時間を短縮できるのだ。試作車のベース車両であるVolvo S60は、時速0〜100kmの加速が6.5秒だが、試作車は5.5秒になっている。
ボルボは、1980年代からフライホイールを車両の駆動力に利用する研究を続けてきた。しかし、これまでのフライホイールは鉄製であり、大きくて重い上に、蓄積できるエネルギー量も制限されていた。今回開発したフライホイールは、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製で、重量は6kg、直径は20cmと小型軽量である。
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