上記のように、有効なリーダーシップスタイルが提唱されても、職場の状況などの環境によって有効なリーダーシップは変わってきます。部下の成熟度を環境と捉え、環境によってどのようなリーダーシップが有効なのかハーシィ(P.Hersey)とブランチャード(K.H.Blanchard)が実証研究しました。これは「SL(Situational Leadership)理論」と呼ばれています。
新入社員など成熟度の低い部下の場合(図5右下の欄に該当)は、仕事の支援よりも教育が必要であり、事細かに指示を出す必要があります。
その後、成熟度が高まってきたら(図表右上の欄に該当)、指示は事細かに出す必要があるものの、仕事を任せつつ、その支援をしていきます。
さらに成熟度が高まったら(図表左上の欄に該当)、もう細かな指示は必要なくなってきます。より高度な仕事を任せ、支援をしていきます。
そのような経緯で部下が熟練者となってきたら(図表左下の欄に該当)、権限を委譲し、支援的行動も少なくしていくこととなります。
職場のコミュニケーションの良しあしでモチベーションが変わってくることを経験された方も多いのではないでしょうか。ここではモチベーションを高める要因について理解を深めて日々のコミュニケーションに役立てていただければと思います。
人は仕事に対する満足度が高ければ、積極的な態度で仕事に望みます。これに対して、仕事の満足度が低ければ消極的になっていくでしょう。
では、仕事に対して満足をもたらす要因と、不満をもたらす要因は同じものなのでしょうか。例えば、高い給料をもらってさえいれば、仕事に満足し、モチベーション高く積極的に仕事ができるのでしょうか。
ハーズバーグ(F.Herzberg)は実証研究の結果、仕事に満足をもたらす要因と、仕事に不満をもたらす要因が違うことを発見しました。これは「動機付け・衛生理論論」と呼ばれています。
衛生要因を整備することは必要ではありますが、さらに積極的に仕事に臨んでほしいと考える場合には、動機づけ要因に働きかける必要があります。なお、動機付け要因の中に「承認」がありますが、これは冒頭のコーチングの部分でお伝えした「承認(アクノレッジ)」になります。
今回はコミュニケーションをテーマにコーチング、リーダーシップ、モチベーションについて述べてきました。紹介した手法全てをいきなり実践しようとするよりも、今回の記事を読んで、少しでも関心の持てた手法から1つずつ実践していくとよいでしょう。ただし、手法に走るのではなく、あくまで相手への関心がコミュニケーションの根底にあることを忘れないでいただければと思います。
三上康一(みかみこういち)
MPA所属中小企業診断士。21年間ガソリンスタンドの運営に携わり、店長を兼務しながら全社の在庫管理や、マーケティング戦略の立案・実施の他、社内研修講師を行う。中小企業診断士として独立後は、高年齢者の継続雇用制度の構築、経営革新計画の作成・承認支援、企業研修、創業支援などの活動を行っている。
「MPA」は総勢70人以上の中小企業診断士の集団です。MPAとは、Mission(使命感を持って)・Passion(情熱的に)・Action(行動する)の頭文字を取ったもので、理念をそのまま名称にしています。「中小零細企業を元気にする!」という強い使命感を持ったメンバーが、中小零細企業とその社長、社員のために情熱を持って接し、しっかりコミュニケーションを取りながら実際に行動しています。
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