次は、採取したサンプルを格納するサンプルキャッチャーについてだ。
サンプルキャッチャーは、直径48mm、長さ57mmの円筒形の容器。中央に回転扉があり、サンプルを格納する部屋を切り替えられるようになっている。「はやぶさ2」では、部屋の数が初代の2部屋から1つ追加され、3部屋になった。
サンプルキャッチャー自体の大きさは変わっていないので、1部屋当たりの容積は小さくなる。しかし、3部屋になったことで、3回のタッチダウン全てで、格納先を分けることが可能になる。
初代では、2回のタッチダウンが行われたが、弾丸を撃ち出すプロジェクタ(射出装置)は3本あり、最大3回のタッチダウンが想定されていた。仮に、3回目があった場合、部屋数が足りなくなるため、2回目と3回目で部屋を共用することになるのだが、そうなると2箇所から採取したサンプルが混じってしまう。これでは、採取した粒子が何回目のタッチダウン(どこ)で採取したものなのかが分からなくなってしまう。できることなら、これは避けたい。
「はやぶさ2」では3部屋になるので、粒子と採取場所の関係は明白だ(初代が持ち帰ったような顕微鏡レベルの微粒子になると、回転ドアのすき間を移動して区別はできなくなるだろうが、一定以上の大きさの粒子は移動できない)。「はやぶさ2」にはインパクタ(衝突装置)も搭載されており、新しく作ったクレーターの底から、風化前のサンプルを採取することも考えられている。場所を区別することには大きな意味がある。
サンプルキャッチャーの動作イメージは、以下の図の通りだ。初代では、120度ごとに回転させ、2回のタッチダウンの後、サンプルが外に出ないようにふたをしていたが、「はやぶさ2」では1部屋増えたため、1回の回転角度は90度ということになる。
また、「はやぶさ2」では、サンプルキャッチャーの内壁が鏡面研磨によって、ピカピカになっている。初代では、もともとμmオーダーの微粒子など想定していなかったため、内壁の表面は粗かった。そのため、地球帰還後のキュレーション作業において、微粒子と内壁表面の微小な傷を区別しにくく、サンプル回収は困難を極めた。内壁の鏡面研磨は、こうした経験を踏まえた改良である。
「はやぶさ2」のサンプル採取が成功すれば、初代よりも大きな粒子が手に入ることになるため、「顕微鏡を使った作業は不要なのでは」と思われるかもしれない。しかし、初代では、μmオーダーの微粒子だけでも大きな成果を得ることができた。そのため、「はやぶさ2」の場合も、肉眼で見えるような粒子の分析をまずやった後で、初代と同じように「微粒子も調べよう!」となるはずだ。
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