パナソニックは、数十mの範囲に存在する複数の物体を同時かつ高精度に検出する79GHz帯のミリ波レーダー技術を開発した。このミリ波レーダーを交差点の監視センサーとして用いれば、夜間や降雪時でも交差点の交通事故を防げるようになる。
パナソニックは2012年4月27日、数十mの範囲に存在する複数の物体を同時かつ高精度に検出する79GHz帯のミリ波レーダー技術を開発したと発表した。ITS(高度道路情報システム)と連動する交差点の監視センサーに適用すれば、停車中の車両などの陰に隠れている歩行者や自転車を検出して走行中の車両に知らせて事故を未然に防ぐことが可能になる。また、ミリ波レーダーを使用しているので、赤外線カメラやレーザー光を使う既存の監視センサーでは難しい、夜間や降雪、逆光といった環境下での物体検出も行える。
自動車では、前方車両に追従して走行するアダプティブクルーズコントロール(ACC)や、追突事故を避けるプリクラッシュシステムなどにミリ波レーダーが使用されている。既存のミリ波レーダーは、車両のようなレーダー反射の強い物体と、歩行者のようなレーダー反射が微弱な物体を同時に検出することはできず、複数の物体を分離して検出する性能も備えていなかった。
パナソニックが開発したミリ波レーダーは、パルス変調方式に独自の符号変調を施す「符号化パルス変調技術」を採用することで感度を高めている。これによって、レーダー受信処理において、対象物からの反射パルスの検出信号と雑音成分のレベル比で40dB以上を確保できるようになり、反射率が車両と比べて1万分の1と微弱な人体の検出が可能になった。車両の近傍に歩行者がいる場合、従来は歩行者からの微弱な反射波が車両からの強い反射波に埋もれてしまうため検出は困難だったが、高感度化によって車両と歩行者を同時に検出できるようになった。パルス変調時に自己相関特性の良いデジタル符号列を用いることで、50cm以下という距離分解能も実現している。
また、送信時にレーダーの電波を特定の方向に集中させる「送信ビームフォーミング」によって反射波の検出範囲を限定しながら、小型のアレイアンテナで受信した複数の信号にデジタル演算処理を施して反射波の到来角を推定する処理を連動させる「送受信アダプティブアンテナ技術」を新たに導入した。同技術の採用で、角度分解能は送信ビーム角の約半分の5度まで向上できた。角度分解能の向上により、小型のアンテナでも広範囲の検出が可能になるとともに、車両と比較して小さい歩行者や二輪車を見分けられるようになった。
なお、このミリ波レーダーは、総務省の研究開発プロジェクト「79GHz帯レーダーシステムの高度化に関する研究開発」(2011〜2013年度)の成果となっている。
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