EVベンチャーのSIM-Driveが開発した試作第2号車「SIM-WIL」は、ダッシュボード部にディスプレイを5個搭載している。これらのうち、ダッシュボード中央の15インチディスプレイと助手席前の10インチディスプレイは、それぞれ市販のPCディスプレイとタブレットPCだった。
EV(電気自動車)技術開発ベンチャーのSIM-Driveが発表した試作EVの第2号車「SIM-WIL」は、満充電の状態からの走行距離が351kmを達成しつつ、外形サイズはコンパクトカーでありながら車室容積は大型車並みを確保したことが最大の特徴となっている。速報記事では、これらの特徴を実現するのに必要だった、新構造のアッパーボディやCRPP(炭素繊維強化プラスチック)採用のドア、パナソニック製のリチウムイオン電池パックを中心に紹介した。
SIM-WILの特徴は、走行距離、小型化、車室容積だけにとどまらない。実は、運転席のインストルメントパネルを含めたダッシュボード部には、ディスプレイが5個も搭載されているのだ。まず、運転席のインストルメントパネルの中央には、速度などの計器情報を表示するメインディスプレイが位置している。その両脇にあるのは、試作EVの第1号車「SIM-LEI」でも採用した、フロントドアに組み込んだ車載カメラを用いたバックミラーシステム用のディスプレイである。そして、ダッシュボードの中央には、カーナビゲーションなどに用いる15インチと大型のディスプレイを組み込んでいる。助手席の前には、映像鑑賞などのエンターテインメント用となる10インチのディスプレイを配置した。
ダッシュボード内に5個のディスプレイを搭載できたのは、ダッシュボードの裏側のスペースに余裕があるためだ。一般的な内燃機関車の場合、車両前部はエンジンルームとして使用されており、エンジンルームとダッシュボードの間にはカーエアコン用のHVAC(暖房、換気、および空調)システムも組み込まれている。一方、SIM-WILは、内燃機関車のエンジンに当たる走行用モーターは車輪の中に組み込んでおり、2次電池パックやインバータなどモーター以外の電動システムは車両の床下のフレーム部に入っているので、車両前部のスペースに余裕がある。このため、HVACシステムを組み込んでも、ダッシュボード部にディスプレイを5個も搭載できるわけだ。
特に、ダッシュボードの中央にある15インチのディスプレイは異彩を放っている。発表会で展示したSIM-WILでは、この15インチディスプレイの部分にPC用のキーボードが接続されていた。このことについて、SIM-WILの開発プロジェクトマネージャーを務めた眞貝知志氏に聞いたところ、「実は、SIM-WILの15インチディスプレイの部分には市販のWindows PCを搭載している」という回答だった。また、助手席の前にある10インチディスプレイも、市販のタブレットPCを組み込んでいるというのだ。眞貝氏は、「市販のWindows PCやタブレットPCを組み込めるほど、ダッシュボードの裏側のスペースに余裕があることを理解してもらいたい。このスペースをどのように有効活用するかについても、今後の開発課題になるだろう」と述べている。
今回の発表で驚いたのが、試作EV第1号車であるSIM-LEIについて、満充電の状態からの走行距離を下方修正したことだ。従来は333kmとしていたが、走行試験を繰り返した結果、270km程度だったことが判明した。
今回発表した「SIM-WIL」については、「SIM-LEIの知見があるので、SIM-WILの走行距離を下方修正することはないだろう」(眞貝氏)という。
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