残念ながら、今回のMWC 2012では目玉発表がありませんでした。毎年毎年大発表が続けられるわけでもありませんから、そういう年があっても不思議ではないでしょう。ただ万が一、IceCreamSandwichのリリースが遅れていたら、それが目玉となっていたと容易に想像できますが……。
ともあれ、IceCreamSandwichが遅れることなく登場したことを幸いと捉えるべきでしょう。2011年のうちに市場を大変賑わせてくれました。
それとは逆に、MWC 2012に間に合わなかった発表に目を向けてみると、2012年のもう1つの大きな動向が見えてきます。
「Mozilla」や「Tizen」など、今回もソフトウェアプラットフォームの発表はたくさんありました。それぞれに背景があり、興味深いものばかりですが、Appleのいない展示会において、Apple製品に対抗できるプラットフォームといえば、Android以外には「Windows」しかありません。
そのWindowsを擁するMicrosoftのキーノート自体は特別な内容ではありませんでしたが、ブース展示ではさすがに人が集まっていました。ただ、残念だったのがWindows Phoneの現行機が展示されているだけでこれといった特長があまり感じられませんでした(画像6)。一方、Nokiaのブースでは「Windows Phone 8」を搭載した「Nokia Lumia900」のデモが行われており、大盛況そのものでした。Nokiaといえば、スマートフォンにどんどんシェアを奪われ、今や会社としての危機に直面していると報じられていていますが、今回のMWCでは大きなブースを構えて活気に満ちていました(画像7)。
Nokiaのブースでは、Symbian OSを搭載した携帯電話や機能を絞り込んだ携帯電話などの展示も併設してありましたが、やはり来場者の興味はLumia900にありました(画像8)。そして、来場者はそのデモ機に触れながらも、デモ機そのものではなく、Windows 8とWindows Phone 8との連携がどのような形でなされるのかということに思いを巡らせているように見えました。また、今回は展示すらありませんでしたが、前回までブースを構えていたSkypeは今やMicrosoftの強力なソフトウェア資産となりました。いわゆるOffice製品はもちろんですが、SkypeをWindows Phone 8、そしてWindows 8にうまく統合できれば、Windows Phone 8は大変魅力のあるスマートフォンになることでしょう。
惜しむらくは、1年以上前から提携を発表していながら、Windows Phone 8の最終形態の発表がMWC 2012に間に合わなかったことです。ユーザーはWindowsをよく知っていますから、ちょっと触って分かる程度のデモでは満足できません。もっと肝心なところ、具体的には上記の2点、すなわちWindows 8とWindows Phone 8との連携、およびOSへのSkypeの統合がユーザーの興味の本質といって間違いないでしょう。
ともあれ、2012年のうちにはWindows 8、そしてWindows Phone 8が出そろう見通しです。Microsoftが、これまでずっと苦戦していたモバイルの分野でとうとう成果を出すときがきたのかもしれません。もちろん、AppleもGoogleも黙ってはいないでしょうから、2012年は本当に面白い1年になると予想されます。そして、それを受けた次回のMWCが今から楽しみでなりません。(次回に続く)
金山二郎(かなやまじろう)氏
株式会社イーフロー 技術本部長。Java黎明(れいめい)期から組み込みJavaを専門に活動している。10年以上の経験に基づく技術とアイデアを、最近はAndroidプログラムの開発で活用している。
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