NHTSAの発表を受け、不具合の原因がどこにあるのか、GMはさまざまな可能性を探った。ボルトのバッテリーは韓国LG Chemが製造したものだ。果たしてバッテリーが原因なのだろうか。
GMでグローバルプロダクトデベロップメント部門のシニアバイスプレジデントを務めるメアリー・バラ(Mary Barra)氏は、発表資料の中で次のように述べている。「今回の無償改修は衝突試験の結果に正対したものであり、バッテリーパック自体やバッテリーの化学反応を変えるといったものではない。バッテリーシステムに対する総テスト時間は28万5000時間に達しており、これは25年に相当する。市場で最も安全なバッテリーシステムだと自負している」。
つまり、GMの調査によればバッテリー自体やバッテリーシステムには問題がなく、車体構造と冷却システムに課題があったということだ。
GMは2009年6月に連邦倒産法第11章の適用を申請している。実質的に米国政府により国有化された形で再建した経緯がある。
そうした中、2010年12月に量産を開始したボルトは同社の再生を象徴するクルマだ。スペックも群を抜く。
電池のみで56km*1)走行できる他、ガソリンで発電機を駆動することにより、最大610kmの走行が可能。米EPA(環境保護庁)基準の燃費ランキング「Fuel Economy Leaders: 2012 Model Year」(2011年11月)では、三菱自動車のEV「i-MiEV」、日産自動車のEV「リーフ」などに続いて、第4位に付けた(図5)。ハイブリッドタイプのEVとしては、最も燃費が高いことになる。
*1)EPA基準。GMの公表値では40〜80km走行できるという。
ボルトはレンジエクステンダー方式を採るため、エンジンが直接の駆動力を生むのではない。モーターとエンジンを併用するタイプのハイブリッド車と比べて、小型のエンジンを採用でき、機械損失の低減やエンジン常用域での駆動により、通常のハイブリッド車よりも燃費が高くなるというのがGMの主張だ。EPAのランキングはGMの主張を裏付けている。
ボルトにはこのような背景があるため、NHTSAによる試験が予備的段階にとどまっている早い段階で、対策を講じたと思われる。
GMによれば販売したボルトの積算走行距離は発売後11カ月に2000万マイルに達しており、その間にNHTSAによるテストと類似した事故を起こしていない。なお、GMは今回の無償改修をリコールと位置付けていない。
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