小規模生産にとどまっているSamsungは日本企業を追い越す勢いで成長する戦略を立てている。韓国を生産基地にしようと投資する米企業も現れた。
韓国は太陽電池ビジネスで後れを取っている。例えば、半導体生産額世界第2位のSamsungグループは2007年から太陽電池に取り組んでいるが、太陽電池の生産量は年間150MW(15万kW)にとどまる。
ただし、太陽電池を諦めたわけではない。同社は2010年5月に新規開発事業への投資計画を明らかにしている。太陽電池の他、照明用LEDや電気自動車(EV)用のリチウムイオン二次電池、医薬品、医療機器へ、10年間で23兆3000億ウォンを投資するというものだ。2011年6月には、太陽電池の生産能力を2015年までに現在の20倍の3GW(300万kW)に拡大する計画を明らかにしている*1)。
*1) 米国のPV Newsによれば、2010年における日本国内の太陽電池生産量は約2.2GWである(2011年5月の発表資料)。
太陽電池の新規用途開拓にも熱心だ。同月、太陽電池をディスプレイの背面に内蔵したネットブック「NP-NC215」(図1)を米国、ロシア、アフリカで発売している。市場として狙いにくいアフリカも対象としていることがSamsungらしい。
この他、2011年10月には南アフリカ共和国やケニア、ナイジェリアで太陽電池を設置したコンテナ型の移動教室「Solar Powered Internet School」*2)の試験運用を開始するなど、太陽電池の市場開拓に熱心だ。
*2) 長さ12mの細長い可搬型のコンテナの上面に展開式の太陽電池を設置した。太陽電池だけで内部に電力を供給できるという。先生と生徒が地理的に離れていても授業ができるよう、内部には50インチ型の電子黒板やインターネット接続用機器、ビデオ会議設備、PCなどを設置した。定員は21人。
韓国を太陽電池の製造拠点として開拓しようとするメーカーもある。米国の化合物薄膜太陽電池メーカーであるStionだ。
Stionは自社の太陽電池を「CIGSS」(銅インジウムガリウムイオウセレン)と呼ぶ*3)。量産品の変換効率は14.1%に達している(米NRELの測定値)。モジュールサイズは1650mm×650mmだ。
*3)いわゆるCIGS系太陽電池である。同方式の太陽電池を量産しているメーカーは、日本国内ではソーラーフロンティアとホンダソルテックだ。
Stionは2011年秋、最初の量産工場を米マサチューセッツ州で稼働させたばかりだ。同工場の生産能力を増強する他、韓国に3500万米ドルを投資し、子会社Stion Koreaを設立し、アジア市場やヨーロッパ市場向けの薄膜太陽電池の製造を計画している。この投資額は初期投資だとしている。Stionの社長兼CEOであるチェット・ファリス(Chet Farris)氏によれば、この投資によって、これまで市場として取り込めていなかったアジア市場に参入できるのだという。
米国工場拡張と、韓国子会社設立に必要な資金を得るため、2012年12月21日(米国時間)、同社は、薄膜処理装置メーカーである韓国AVACO(Advanced Vacuum & Clean Equipment Optimizer)と韓国のプライベートエクイティファンドなどによる総額1億3000万米ドルの株式投資を受けたと発表した*4)。
*4) 今回の投資では、台湾のTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)の他、米国のベンチャーキャピタル、すなわち、米Khosla Venturesや米Lightspeed Venture Partners、米Braemar Energy Ventures、米General Catalyst Partnersが参加している。なお、TSMCは薄膜系太陽電池を自社生産するために、2010年6月にStionと共同開発契約を結んでいる。TSMCはこのとき、Stionの株式の21%を取得している。
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