Heliatekは変換効率を着実に伸ばしており、今回9.8%を実現した。この値は最終的な目標に対して、どの程度の成果なのだろうか。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2009年に公開した太陽光発電に関するロードマップ「PV2030+」によれば、2017年時点の有機薄膜太陽電池の変換効率の開発目標は12%(セル)、10%(モジュール)だ。2025年時点の目標はセル・モジュールとも15%だ。各社*3)とも10%を1つの山として見ている。
*3)国内ではKonarka Technologiesと提携したコニカミノルタホールディングスや、東レ、住友スリーエム(米3M)、三菱化学などが開発成果を発表している。
各社の狙いは変換効率よりも製造コストだ。10%程度の変換効率が実現できれば、製造コストで勝る有機薄膜太陽電池に活用の道が開ける。
有機薄膜太陽電池に利用する有機半導体には高分子系と、Heliatekなどが採用する低分子系がある。成膜方法は蒸着法(Heliatek)と塗布法に分かれる。
塗布法は究極の低コスト化が可能な手法だ。常温、常圧で大量生産に向くロールツーロール法を採用しやすいためだ(図4)。ロールツーロール法が実現すると、プラスチックフィルムと同様の方法で量産できることになる。全ての太陽電池の中で最も材料の使用量が少なくなるため、材料コストも下がる。
この他にも有機薄膜太陽電池にはメリットがある。有機物はSiよりも軽く、薄くでき、自由な形状に加工しやすい。つまり、軽量で曲がる太陽電池が可能になる。繊維に織り込んだ太陽電池、窓ガラスと一体化した太陽電池、EVのボディの曲面に合わせた太陽電池などさまざまな用途が開ける(図5)。最後の夢はペンキのように塗るだけでどこでも発電できる太陽電池だろう。
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