5Mを管理するってどういうこと? QCDの個々要素でも、全体を通しても、“良いモノづくり”を実現するにはどうしたらいいのでしょうか? 本稿で生産品質を管理するための基本を学びましょう。
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製品の生産を行う場合は、必要な生産要素である5M(Men、Methods、Machines、Materials、Measurements)のシッカリとした管理が不可欠となります。所定の品質水準を確保するためには、これらの個別管理と結合管理を必要とします。結合とは、生産の実施であり、結合の結果として現れるのがQ(Quality)、C(Cost)、D(Delivery)です。望ましいQCDは、5Mの結合管理だけではなくて、個別管理もまた、合理的に行われていなければ達成できません。
モノづくりにおける私たちの周囲には、多くのトラブルが日々発生しますが、個々のトラブルの直接原因は、技術上の不具合が起因しているかもしれませんが、その真因は管理の不十分さによることが多いものです。個々の技術がいくら優れていても、これらがうまく結合されていなければなりません。弱いところは、常に補強していくようにしなければ、持てる力を100%発揮することはできません。このために、“管理”が必要となってくるわけです。つまり、トラブルを管理上の原因の除去に結び付けるようにすれば、効果の大きい対策が期待できます。
品質の向上や業務改善などに広く用いられているマネジメント手法に「PDCAサイクル」があります。管理とは、「管理サイクルを回すこと」であり、継続的に品質や業務を改善をしていくための基本でもあります。
計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)のプロセスを順に実施していきます。管理事項に対する実施事項を計画(作成)し、その計画に沿って実行し、その結果を確認・評価し、反省し、その反省を踏まえて、不具合を是正した上でさらに、次の計画に反映させ、再計画へのプロセスに入り、新たなPDCAサイクルを進めていくことで、スパイラル状に継続的改善を図っていこうとする考え方です。いわゆる、計画通りの目標を達成するための一連の改善活動をそれぞれ、Plan-Do-Check-Action(PDCA)という観点から管理するフレームワークともいえます。これを図に表したのが「図1 管理(PDCA)サイクル」といわれるものです。
このPDCAサイクルは、品質管理体系を構築したエドワーズ・デミング(W.Edwards Deming)博士が、生産管理や品質管理などの管理業務を継続的にスムーズに進めていくために、改善プロセスが連続的なフィードバック・ループとなるように提唱したものです。このことから、デミング・サイクル(Deming cycle)とも呼ばれる場合もあります。「管理(PDCA)サイクル」については、いろいろな人が説明していますが、おおむね次のように解説されていますので、理解の一助としていただきたいと思います。
Plan(計画、基準、標準、指示) 従来の実績や将来の予測などを基にして、「あるべき姿(ありたい姿)」の目標を設定し、業務計画を作成する。それを実現するためのプロセスの立案や設計(改訂)を行う。
Do(実行、実施、遂行、作業) 立案された計画に沿って業務計画を実施する。
Check(差の検定、反省、点検、評価、監査、検査、試験、確認) 計画に沿って仕事がなされているかどうかを測定結果などにより評価する。結果を目標と比較するなどの分析を行って、業務の実施が計画に沿っているかどうかを検証・確認する。
Action(改善、是正、処置、対策、修正) 実施結果の評価により、それが計画から外れていれば計画を是正する。実施が計画に沿っていない部分を調べて、予防処置などの改善を行い、プロセスの継続的改善や向上に必要な処置を実施し次の計画に反映させる。
いずれにしても、継続的に高い品質水準の達成を継続していくためには、このPDCAサイクルによって生産要素(5M)を管理していかなければなりません。また、実施結果を正しく評価するためには、目標を数値として捉えておくことが欠かせません。加えて、異常が明らかとなるように正常なプロセスや作業の方法を標準化しておくことも肝要です。さらに重要なことは、数値で表れていない項目や標準の存在しない状況に、「管理」されている状態はあり得ないということを肝に銘じておくことです。
最近、「見える化」という言葉がよく使われていますが、この「見える化」の本来の目的は、異常(例外)な事態が発生した場合に適切な処置が行われるように「異常が見えるようにすること」です。従って、あらかじめ、正常な状態と異常な状態を明らかにしておかなければなりません。この方法が「標準(化)」なわけです。
また、PDCAサイクルの中でも特に重要なステップは、「C(Check)」の捉え方です。Cの精度がどの程度かによって、飛躍的向上のスパイラルに乗り切れるかどうかが決定付けられます。そのためには、Cを単に「確認」として捉えないことです。あくまで計画にこだわり続け、「目標達成」を成し遂げる熱意を持ち続けていくことが重要です。
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