多くの製造業が海外での成長を目指す中、海外駐在員の役割は重要になっていますが、思った力を発揮できない場合も多く見られます。本連載では、HR視点でどのような考え方が必要で、どのような協力体制を築くべきかをお伝えします。第1回となる今回は「リーダーシップの壁」について解説します。
日本の製造業が海外で成長を続ける中、多くの駐在員が日本から海外に派遣されています。現地化が進んでいるとはいえ、いまだに日本人の海外駐在員は各拠点において重要な役割を担う場合が少なくありません。例えば、日本国内で優秀であった社員が海外駐在先に行った途端、マネジメントにおいて以下のような反応に直面します。
なぜ、日本で通用し、成果を残してきたマネジメント手法が通じないのでしょうか――。これまで多くの方がこうした問題に直面した際に自分を責めていたかもしれません。しかし、これは個人の能力不足によるものではありません。読者の皆さんが培ってきた「日本型マネジメント」と、現地スタッフが求めている「理想のマネジメント」にギャップが生じていることが大きな要因です。
今回の連載は、そのような方々のために、HR(Human Resources)の視点で、どのような考え方が必要で、どのように周囲と協力体制を築くべきかを「リーダーシップの壁」「連携の壁」「現地化の壁」という3つの視点でお伝えします。第1回となる今回は日本のリーダー像とのギャップで生まれる「リーダーシップの壁」について解説します。
読者の皆さんにとって、理想のリーダー像としてどのような人を思い浮かべるでしょうか。例えば、以下のような感じではないでしょうか。
こうした特徴は、日本の組織において、上司や部下から信頼される「良いリーダー」の在り方だと言えます。しかし文化が変われば、日本での「良いリーダー」は、真逆の評価を受ける可能性があります。
例えば、会議で部下の意見をじっくり聞こうと沈黙を守っていると、「何を考えているか分からない」「リーダーとしての意見がない」「無責任だ」と受け取られることがあります。また、プロセスを重視して慎重に合意形成や根回しを進めていると、「決断力がない」「スピード感に欠ける」と評価されるケースも少なくありません。
さらに、チーム一丸となって助け合おうと呼びかけた結果、かえってスタッフから「責任の所在が曖昧だ」「なぜ私の仕事に干渉するのか」といった反発を招くこともあります。
これらはいずれも、個人の知識、技術、スキルの問題ではなく、「当たり前」が文化によって異なることに起因しています。異文化間のコミュニケーションにおいて重要なのは、国別や組織別のルールを暗記することではなく、多様な常識に対して「客観性を持つこと」です。
もちろん、同じ文化圏に属していても個人差は存在するものであり、「十人十色」であることは前提ですが、客観的に知ることは大きな価値を持ちます。その前提を踏まえたうえで、本稿では、日本人が海外法人や現地工場のマネジメントにおいて特に陥りやすい「3つのズレ」について解説します。
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