2011年6月9〜10日に幕張メッセで開催された「デジタルサイネージ ジャパン 2011(以下、DSJ2011)」では、デジタルサイネージに関する最新ソリューションが多数披露された。その中から特に注目したい製品・サービスを紹介する。
デジタルサイネージの要素技術の中でも最も重要なのは“ディスプレイ技術”だろう。DSJ2011では新しい技術動向が見られた。
シャープは、新開発した超薄型ベゼルの60V型ディスプレイ「PN-V602」を一押ししていた。同製品はマルチ構成(最大25画面)でシステムフレーム幅がわずか6.5mm。さらに、「直下型LEDバックライトの採用により、エリア制御で消費電力を半分にしたり、従来機比で約2倍となる1500カンデラ毎平方メートル(cd/m2)の高輝度を発揮する」(説明員)。実際に目を引く“明るさ”だった。
サムスン電子(展示は代理店であるエヌジーシー)も当然、超薄型ベゼルを訴求ポイントにし、マルチ構成(最大100画面)で5.5mmのシステムフレーム幅を実現した55V型新製品「SyncMaster UD55A」をブース前面で展示していた。同製品の輝度は700cd/m2とシャープ新製品の半分以下だが、その分、消費電力を250Wに抑える。デジタルサイネージ分野でも両社の争いは続きそうだ。
もはやデジタルサイネージでマルチタッチ操作は珍しくないが、NECが初披露した「MultiTouchWall(仮称)」は、46V型(1366×768画素)のマルチディスプレイで対応していたのが目新しかった。
マルチタッチは赤外線センサー方式、同時認識は2点ながら操作感は十分に滑らかだった。既に東京・品川の日本マイクロソフト新社屋に導入されている。NECはデジタルサイネージ分野でマイクロソフト、インテルとの戦略的協業を進めている(関連記事)。MultiTouchWallもシステム基盤には最新の第2世代インテル Core iプロセッサ(詳細は不明)とWindows Embedded Standard 7を採用している。
裸眼3Dディスプレイでは、大日本印刷が仏Alioscopy社、前述のエヌジーシーが蘭Dimenco Display社のレンチキュラー方式製品(それぞれ47V型と52V型)を展示していた。同方式は、パネル前面に張った特殊レンズで左眼・右眼の間に視差を生み出し、映像を3D化するもの。視点数と輝度は、Alioscopy社製品が8視点で500cd/m2、Dimenco Display社製品は28視点で700cd/m2である。やはりスペックの差が示す通り、後者の方が見やすかった。
興味深かったのは、石田大成社、エヌエスティ・グローバリストなどが展示していた“透明ディスプレイ”だ。どちらもサムスン電子が2011年春から量産を開始した22V型透明液晶パネルを使用していた。VA(Vertical Alignment)方式、1680×1050画素の同パネルは、バックライト光源にエッジ型白色LEDと外光を用いたり、開口率を高めて15%超の透過率を確保している。エヌエスティ・グローバリストは「ショーウィンドウがサイネージに変わる」(説明員)と、展示する絵本に関連するコンテンツを“ウィンドウ(透明ディスプレイ)”に表示していた。
同じく岡谷エレクトロニクスが展示していた台湾Poindus SystemsのパネルPC「VariVitro」もショーウィンドウとして使えそうだった。VariVitroは、投影型静電容量タッチパネルの導電層をエッチングすることで、10mm以下のガラスを介したタッチ操作を可能にしている。つまり、ショーウィンドウの内側に貼り付つければ、インタラクティブなデジタルサイネージとして使える。
関連リンク: | |
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⇒ | 石田大成社 |
⇒ | エヌエスティ・グローバリスト |
⇒ | 岡谷エレクトロニクス |
変わったところでは、三菱電機のDLPプロジェクターを使ったデジタルサイネージがある。6500ルーメンの高輝度プロジェクターを2台使い、住友スリーエム製のリアプロジェクションスクリーンに対して背後から同じ映像を重ね合わせて投影していた。説明員は「2台のプロジェクターを使うのは画面の明るさを確保するため。映像の重ね合わせで生じるズレは補正している。プロジェクターとスクリーンなら設置場所が固定されないというメリットがある」としていた。
関連リンク: | |
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⇒ | 三菱電機 |
プロジェクター活用という点では、大日本印刷の「CHARALOID(キャラロイド)」もユニークだった。CHARALOIDは、人型パネルにプロジェクターで背後からキャラクター像を投影し、専用ソフトに入力したテキストから音声を合成(音声合成エンジンにはエーアイの「AITalk」を使用)。テキストに挟み込んだコマンドによりキャラクターの表情を変えたり、キャラクターが手に持つパネルのコンテンツを切り替えられるため、まるで実際にキャラクターが喋っているかのように見える。デジタルサイネージ向けディスプレイとして、プロジェクターがあらためて見直されそうな印象を受けた。
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