他分野からも知恵をどんどん借用しよう災害未然防止のための設計とTRIZ【活用編】(3)(3/3 ページ)

» 2011年06月22日 11時40分 公開
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 次に、「やはり現状のブレーキシステムはなくせない」と考えて、いろいろな視点から第2段階の究極の理想解を定義します。ここでは、ブレーキの不具合を多く起こしているブレーキパッドアッシーがなくてもブレーキディスクの回転が止められればいいのではないかと考えています。

図8 図8 ブレーキシステムの第2段階の究極の理想解例

 一見、禅問答のような質問が並んでいますが、これらを1つ1つ吟味しながら、何か方法がないかとポジティブに考えることが、きっとラジカルな発明につながるものと確信しています。

 皆さんが研究開発しているシステムの究極の理想解は何だろうか? すぐにそこまでは無理にしても、そのシステムの中で重要なサブシステムの究極の理想解は?

 いまは、環境負荷低減に対する取り組みが次世代の重要な市場になることが容易に想定されます。そのとき、「システム内で重要な役割をするのだが、環境的には“ほかの何か”に置き換えたい」というニーズに対して、この究極の理想解は漠然としているが、抽象度を増して全体最適の中での発想を求める点で、ほかのTRIZのツールと一線を描くものではあるのですが、強力で執念深い思考をすれば有効な手法だといえるでしょう。

 以上、出来るだけ具体的にTRIZの描く手法の使い方を述べてきたつもりです。実は、この後に「TRIZで出した多くのアイデアをどのようにまとめていくのか?」が残っているのですが、まずはTRIZを使って、心理的惰性を打破して考え抜くことが出来ることが前提です。

 TRIZといえども、「一発必中」のアイデア発想手法ではありません。やはり多くの視点から多くのアイデアを出した後に、優れたアイデアを選択し結合して磨き上げていくことが必要になります。しかし、多くの視点を思うがままに探るのではなく、問題の定義から発想まで、知的財産の分析結果に基づいて体系的に組み立てられる手法であることは、従来の発想法とは一線を描くものと思います。ただ、やはり紙面のみでアイデア発想のいわゆる暗黙知的な部分を表現するのは困難を極めます。「習うより慣れろ」といいますから、ぜひ読者の方々もTRIZを使ったアイデア発想を試してみて、不明点など筆者にご質問いただければ幸いです。また、ご質問やご意見などはどしどし送っていただけるとうれしく思います。

Profile

桑原 正浩(くわはら まさひろ)

熊本県生まれ。1985年鹿児島大学卒業。KYB(カヤバ工業)株式会社、オムロン株式会社で研究開発や商品開発に勤務後、技術問題解決コンサルタントとして独立。現在は、株式会社アイデア、コンサルティングセンター長。実務型TRIZコンサルタントとして、国内外企業の技術開発テーマの創造的問題解決のコンサルティングに携わる一方、大学や産業振興財団の中小企業支援育成事業、日科技連の次世代TQM構築PJなどでも活躍中。「TRIZで日本の製造業を元気にする」が合言葉。

著作物に「効率的に発明する:ロジカルアイデア発想法TRIZ」(SMBC出版)、「使えるTRIZ」(日刊工業新聞社「機械設計」連載)、韓国では「TRIZによる論理的問題解決:アイデアレシピ」(韓国能率協会出版)がある。ブログ「TRIZコンサルの発明的日常閑話」

Twitterアカウント:@kuwahara_triz



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