2011年6月22〜24日に開催される「第22回 設計・製造ソリューション展」。今年の出展トレンドとともに、日本のモノづくり企業の心意気がうかがえるエピソードが聞こえてきた。
2011年6月22〜24日、東京ビッグサイトで「第22回 設計・製造ソリューション展」が開催される。本稿では主催者であるリード・エグジビジョン・ジャパンで、本展示会の事務局長を務める島田周平氏に話を聞いた。
「1つ目の特徴としては、今年(2011年)は3次元CADと並んで、電子回路設計ツールベンダー企業が多数出展していることが挙げられます。エレメカ連携は久しく課題とされてきましたが、いよいよ各社の環境が整い、具体的に実践で利用できる状況が整いつつあるようです」(リード・エグジビジョン・ジャパン 設計・製造ソリューション展 事務局長 島田周平氏)
今回のブース配置では、機構系の3次元CADベンダーと隣り合わせるようにして回路設計に強い企業各社がブースを出しているのが特徴だ。
2つ目の特徴は、「クラウド」を活用したモノづくりソリューションの登場だ。島田氏によるとPDM、ERP、生産管理システムの分野でのクラウド、Saas型の展示が増え始めているという。クラウドの恩恵は特定の情報システム部門を持たない、あるいは大きな情報システム部門を持つことのできない中堅、中小企業にとって特に大きなメリットがあるといわれている。クラウド型ソリューションの登場により、いままでシステムの保守やセキュリティに気を取られて本格的なIT導入を迷っていた中堅、中小企業にとってはITを駆使したモノづくりをより身近に感じることができそうだ。
また、例年、DMS展は3月ごろから具体的な出展などの打ち合わせを始めるが、その渦中で発生した震災に、島田氏も展示会への影響を懸念したという。
震災直後は、一部の出展社から自粛すべきではないかという声もあった。しかし、4月に入ると、多くの出展社から「このような時期だからこそ、展示会に出展して売上を上げたい。ぜひ開催してほしい」という声が事務局に寄せられたという。また5月に入り、出展各社の側で顧客企業の状況把握ができ、今後の行動を検討できる段階になると、モノづくり環境の改善・改革が喫緊に必要だという声が多く聞かれるようになったという。策定していた自社の事業継続計画やリスク管理体制の問題点などが明らかになり、これを機に見直したいという問い合わせが増えつつあるのだという。
加えて電力不足への備えも喫緊の課題となっている。従来、省エネ法対応など、コンプライアンス上の問題として語られてきた事業者の消費電力管理が生産・在庫などに直結した課題として持ち上がっている。各社の15%削減目標に対して即効性のあるソリューションを求めている。
出展各社はこうした企業の課題に対応すべく、出展ブース内容も当初と予定を切り替え、いままさに必要とされるソリューションの展示に力を入れているという。
「今回は展示会の公式Webサイト上の情報がどんどん更新されています。最新の情報はリーフレットだけでなく、Webサイト上も併せて確認いただくとよいでしょう」(島田氏)
消費電力削減対策、輪番停電対策、サプライチェーン管理やBCPの見直しなど、例年以上に喫緊の課題を抱えた来場者が多くなりそうな今回のDMS展。会期が3日間あるとはいえ、ブースを手当たり次第に回っていては具体的なところまで話を詰めることは難しい。
事前にリサーチをして目的のブースに向かう方が多いが、各社ともDMS展直前に新製品をリリースすることもあり、下調べだけでは不十分な場合もあるかもしれない。
そこで、活用したいのが、事前アポイントシステムだ。
会期前に、このシステムに登録しておくことで、課題に対応できる複数の出展社と事前にアポイントを簡単に取ることができる。
複数の企業から得られた見積もりを基に、事前に比較検討したり、会期中に具体的に担当者と話を詰めることができる。
「事前にアポイントを入れておくことで、担当者と確実に商談することができ、課題に合った具体的な提案が受けられます。今期中にめどを立てたい、といった急ぎの課題でも事前に交渉を進めておけば、当日は要点を絞って話ができますし、日帰り出張であわただしく見て回る方でも事前に時間調整しておけば効率よく会場を回ることができます。余った時間はセミナーなどで知見を広げることもできるでしょう。ぜひ活用いただきたいサービスです」(島田氏)
専門セミナーでは、マツダ NVH性能・CAE技術開発部CAE技術開発グループ アシスタントマネージャー 花田裕氏によるCAE活用事例や、近年、中国やインドなどで現地スタッフの育成に力を入れているパナソニックの理事で人材開発カンパニー ものづくり研修センター センター長である上田修治氏による「グローバル時代を勝ち抜くパナソニックのモノづくり・人づくり」といった魅力的な講演が用意されている。商談の合間にはぜひ聴講したいところだ。
注:専門セミナーには、有料セミナーと無料セミナーがある。いずれの場合も事前に登録が必要となる。満席の場合は聴講できないので、早めに申し込んでおくことをお勧めする。本稿で紹介した以外にも連日多数のセミナーが予定されているので、詳しくは、専門セミナーの紹介ページを参照されたい。
ご存じのようにDMS展は4つの展示会の集合体「日本 ものづくりワールド」の1つとして開催される。併設展の1つである「機械要素技術展」には毎年地域や都道府県ごとのブースも設けられており、地域の技術力ある企業が多数出展している。もちろん、宮城県・岩手県・福島県など、今回、震災および原発事故の影響を受けた地域の企業も過去に多数出展してきた。
いわて産業振興センターもそんな出展社の1つだ。岩手は震源からやや離れているとはいえ、宮城同様、太平洋沿岸地域では大きな被害を受け、物流網の寸断の影響も受けている。
「とはいえ、県内には内陸の被害の少なかった地域に居を構える企業が多数あります。彼らはみな無事な状況です。ところが、県名だけで被災しているに違いない、と判断されかねない状況にあるのです」(島田氏)
農作物の「風評被害」が懸念されていることは広く知られていることだが、同様に製造業界でも、被災地域のメーカーは被害を受けていないにもかかわらず、生産ができないのではないか、と誤解されている面もあるという。
「被害がなかった地域の事業者にとっては、いまここで展示会に出展し、県内のビジネスを活性化させることこそが使命である、という意識を強く持っていらっしゃるようです。われわれも、ぜひとも支援して復興のお手伝いをしなければ、とあらためて思うことになったのです」(島田氏)
今回、こうした地元企業の意向もあり、東北地域からは2010年とほぼ同数の企業が出展することになっているという。
「いわて産業振興センターの心意気には私も胸が熱くなる思いでした」(島田氏)
読者の皆さんには、ぜひ隣接の展示会にも足を伸ばし、東北のモノづくり企業の技術も見ていただきたい。
このほか、「日本 ものづくりワールド」では、「3D&バーチャル リアリティ展」や「メディカル テクノロジーEXPO」も開催される。
メディカル テクノロジーEXPOの専門セミナーには、DMS展目当ての来場者にもお勧めしたい講演があるという。スズキプレシオン 代表取締役会長 鈴木庸介氏の講演だ。
鈴木氏は医療業界に新規参入し、成功を収めた人物。医療業界は、コンシューマ製品などと比較して法規制などが多く、参入が難しい印象がある業界の1つだ。日本が得意とする精緻(せいち)な加工技術などは医療業界の革新にとっても重要な要素といわれるが、とかく商流が外部から分かりにくいなど、目に見えない障壁を感じることも少なくないようだ。
その中で、鈴木氏が率いるスズキプレシオンは、チタンの精密加工技術を武器に市場参入に成功、技術力で医療業界で地位を確立しつつあるという。セミナーでは鈴木氏が自身の経験を基に、医療業界への参入のノウハウを披露するという。
医療技術の進化に伴い、モノづくり企業の医療分野への参入に期待する向きも少なくない。新しいビジネスチャンスの獲得に向け、こちらもぜひ聴講していただきたい。
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