カクカクとした機械部品であろうと、曲面が多用されるコンシューマ製品の筐体のモデリングであるにせよ、工業製品といわれるものの形状の作成に付いて回るのが、寸法の定義であり、ある種の厳密さです。
さらに2次元図面の場合には、誤解を恐れずに言えば、図面上に書かれている形状が厳密である必要性よりも、そこに書かれている寸法や公差などの情報が大事になります。3次元CADの場合には、寸法は形状そのものと連動している関係上、形状も正確なはずなのです。
しかし、ここで考えたいことがあります。寸法が決まっているということは、モノの形なり仕様なりがある程度決まっていると解釈することもできます。だから、ある程度決まっている形状を作っていくにはとても便利です。
もっと言えば、形状そのものへの意識よりも、どんな寸法で定義するかを考えればよいのです。データそのものも数式で定義されているために厳密です。機械モノには厳密さが付きものなので、このようなデータの定義がふさわしいのです。
画面上でアセンブリを組み、はめ合いをチェックし、干渉をチェックする。さらに、そのソリッドデータを活用して、構造解析や機構解析を実施する。つまり、寸法や重量、重心など“本当にモノを作っていくための情報をきちんと取り込んだデータ”を使うことに向いているのです。
しかし、一方で難しいこともあります。例えば、形状や寸法そのものがあまり厳密に決まっていない、……というか、いろいろと検討したい、という場合です。形状を変える作業は、特にヒストリーベースのパラメトリックCADの場合には、スケッチ上の寸法などをいじることで変更する、ということで実現するので、大変にまだるっこしいです。
いろいろな拘束条件も付いているので、思うように形状が変わりません。さらに言えば、そもそも厳密な寸法がまだ決まっていないとか、まずはアバウトな形を作ってみたいなどというときも、何となく面倒です。どこか自由に形状を押したり、引っ張ったりできない面倒さがCADのデータにはあります。
いろいろと細かいことを述べましたが、つまるところ、厳密さが必要で、比較的カクカクした形状とか、一見して丸い形状でも、半径などで数値指定できる形状で、比較的決まった形状の作成が中心なのであれば、CADがいいはずです。
余談ですが、私の身近にポリゴンのモデリングのエキスパートがいます。そんな彼が時折、どう見てもCADが向いていると思われる形状を、CGでモデリングしているのを見ると「苦労しているなぁ」と思うし、逆にそんな形状を私がCADでモデリングをしているのを彼が見れば、一言「いいなぁ」とつぶやいてきます。
形状を一回だけ作るのであればまだいいのですが、設計変更があると結構大変です。そうするとやはり、初期のコンセプトを検討していくのであれば、CGもかなり使えそうなのですが、設計ツールとしてみればつらいところがあります。
ところで、製造業の設計においても、寸法にクリティカルになるよりも、見栄えやスピードが必要なときがあります。そんなときは違うデータ形式のビュアを使うことがあります。
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