生産スケジューラは企業の生産性向上に協力する外部コンサルタントが生産改革のツールとして利用することもよくあります。言葉の違う社員同士が共通の理解の上で協力できるのはシステムだから、という理由もあるでしょう。情報システムの世界では「ゴミを入れればゴミが出る」とも語られます。入力されるマスターデータやトランザクションデータが正しくなければまったく意味がありません。また、そのデータの正確性・継続性を保つためにはしっかりとした管理体制が必要になります。
大企業傘下の現地トップが本国(日本国内の本社など)の無理解に悩むように、中小企業のトップは違った意味で本国との関係に悩むことが多いようです。
中国の人々は日本人と比較して現実的・実利的かつ個人主義的な思考をする傾向が強くあります。ほとんどがオーナー会社である中小企業では、本国トップの指示しか聞かない傾向があります(オーナーの言うこと意外は相手にしてもらえない)。
大企業とは違い、日本本国のオーナ社長は自ら前線でセールスに動くことも多く、そう簡単には海外の生産現場に来ることができません。離れた国から、現地トップ経由の伝言で指示を出しても、それは現地トップの指示として受け止められます。つまり、オーナーの意思であるとは受け取ってもらえず、コントロールしにくいのです。
これはまさに筆者自身の悩みの種でもあります。対策としては、定期的な本社社長の現地入りに加え、業績の上がらない工場は閉める、というくらいの厳しい覚悟をもった指示・指導を実施することが必要でしょう。
昨今の日本の製造業の海外進出の傾向を見るとこうしたチャイナリスクを避けるため、東南アジアなどに進出する工場も多いようです(下図参照)。もちろん、人件費などのコスト面でそうした選択をする企業も少なくありませんが、いざ現地で運営を始めてしまえば、前述と同様にコミュニケーションの問題や働くことへの価値観の違い、企業組織へのロイヤルティーの格差などが存在することに変わりはありません。
筆者が日本に帰国した折には、顧客から進出先として中国がよいか、はたまた他の地域がよいかと聞かれることがあります。筆者がいつも答えるのは、リスクとメリットのバランスをどう評価するかという点です。拠点を増やす、移設するというのはある種の投資ですから、メリットが大きければリスクも大きく、リスクが小されければメリットも小さい場合が少なくないというのが、中国各地、アジア各地で日系の工場を見てきた筆者の感想です。
次回はリスクは大きいながら巨大市場のメリットを持つ中国に進出し、成功している中小企業がどのような取り組みを行っているかを紹介する予定です。生産革新はモノの作り方だけとっても、人づくり・組織づくり、管理を保全するシステムづくりと多くの要素が関係します。既に中国工場にて生産を続けている中小製造業の多くも、今後は高付加価値の製品、市場に呼応した少量多品種の生産ラインの確立が生き残りには不可欠です。
かつて日本の工場が少品種多量生産から変化を求められたように、中国という大きな市場では中国現地企業も含め、多数の競争相手に勝ち抜くためにも、自らの改革が求められているようです。次回はこうした状況を詳しく紹介する予定です。お楽しみに。
独立系中堅・中小企業の海外展開が進んでいます。「海外生産」コーナーでは、東アジア、ASEANを中心に、市場動向や商習慣、政治、風習などを、現地レポートで紹介しています。併せてご覧ください。
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