製造業×品質、転換期を迎えるモノづくりの在り方 特集

再発防止アプローチによる品質マネジメント改革いま考えるべき品質マネジメント改革(3)(5/6 ページ)

» 2010年07月08日 00時00分 公開

品質ナレッジのデータベースによる体系的管理方法

 蓄積した品質に関するナレッジを有効に活用するためには、カテゴリや属性を設定しておき、検索性の向上や体系的な管理を行う必要があります。これがうまくいくと、デザインレビューの効率が向上や、チェックのヌケモレを防止する効果が期待できます。

 しかしその実現のためには、情報システムやデータベースの力を借りることが必要になります。既知の不具合を再発させてしまう理由のところで、部門別にExcelで情報管理しているために、コンテンツのカテゴリが統一されていない、開発プロジェクト単位で活用する際に絞り込む必要があるが、フィルタが設定されていない、統一されていない、などの問題があることを説明しました。

 図6は、設計チェックリストや過去の不具合などのナレッジコンテンツを体系的に管理しているデータベース事例の概念です。設計ノウハウを部位とフェイズのマトリクスでカテゴライズしています。このような分類を行うと、例えば、光学系の基本設計レビューで確認する必要がある設計ノウハウをすぐに特定することができますし、各設計ノウハウにフィルタ属性(静電気や熱などの技術的なキーワード)を設定することで、製品開発プロジェクトに適用すべき設計ノウハウの絞込みや選択が容易になり、レビューモレの防止に対する効果が期待できます。

 各設計ノウハウに対して、各製品開発プロジェクトでの計画・実行・確認内容を、デザインレビューの場で直接データベースに登録するようにすると、デザインレビューの効率をさらに向上することが期待できます。また、プロジェクトにおける設計ノウハウの適用予定数と実績数を比較することで、プロジェクト進ちょく管理にも活用する活用方法も考えられます。これについては、品質マネジメント改革事例で具体例をご紹介します。


ポイント4:設計ノウハウのカテゴリー化とキーワードの付与



図6 カテゴライズされた設計ノウハウ情報管理 図6 カテゴライズされた設計ノウハウ情報管理

品質マネジメントの運用プロセスを可視化する手法

 品質は設計により決まるので、品質の確保は実質的に技術部門が担当していることが多いのが実態です。しかし、製品の複雑化や電子制御化、生産のグローバルが進行する中、品質を確保するために、技術部門と品質保証部門が共同で、不具合や設計ノウハウを共有して活用したり、相互に品質のチェックを実施したり、よりコミュニケーションの密度を高くし、品質マネジメントを実践する必要があります。

 しかし、品質保証部門から全社の品質マネジメント改革や統制を主体的にリードするためには、品質保証部門自身が品質マネジメントの運用プロセスを企画・設計し、全社的な運用統制するスキルをもつ必要があります。

 そこで、ここからは品質マネジメントの運用プロセスを設計・記述するための業務モデリングという手法をご紹介します。図7は、品質保証部門が主体となって再発防止策を月次の定例で検討を実施し、技術部門や不具合に関連する部門が主体となって真因分析し、再発防止策を検討した結果を品質マネジメントシステムに登録する、という運用プロセスを業務モデリングしたものです。

 各記号は以下を意味しています。

  • 六角形(ピンク色):イベント(業務プロセスを開始するトリガー)
  • 角丸四角形(緑色):業務
  • モニター画面:情報システムの操作

 運用を統制するための第一歩は、今後運用していきたい業務方式・業務モデルを記述し、他部門に説明することです。ステップとしては、最初に現状を業務モデリング、問題個所をチャートに記入、問題を改善した後の業務モデルを作成、の手順です。あるべき業務のコンセプトの具体化手法として業務モデリングの方法は非常に有効ですので、ぜひ試してみてください。


ポイント5:業務モデルの可視化は運用統制の第一歩



図7 再発防止検討運用の業務モデル 図7 再発防止検討運用の業務モデル
それぞれの記号の意味は下記の通り。
・六角形 ⇒ イベント(業務プロセスを開始するトリガー)
・角丸四角形 ⇒ 業務
・モニター画面 ⇒ 情報システムの操作

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