製品やサービス品質に対する消費者の期待値は高まっており、メーカー側の想像を超えることがあります。最近のリコール事例では、消費者の誤使用や期待値とメーカー側で当初想定していたスペックや法規への抵触が議論の対象となっていました(図7)。
このような事例はそもそも「欠陥・不具合とは何?」ということを問い掛ける問題ですが、顧客視点・顧客目線の品質管理が不可欠であるということを知らしめています。このような状況下でメーカー側はユーザーの期待値を考慮したスペックの定義や、リスクマネジメントの必要性、技術だけでない消費者に対する対応力を要求しているのだと思います。
自動車や電化製品の電子化は年々進み、安全・走り・便利・快適の分野で多くの電子技術が採用されています。最新の高級車にはコンピュータが約100個搭載(注1)されているものもあり、「走るコンピュータ」ともいわれています(図8)。
注1:「電子化進む危うさ」(朝日新聞2010年3月5日朝刊 第3面)
半面、不具合が発生した場合の原因追求が難しくなったともいわれています。機械部品の不具合の場合には、目視で不具合の判断や対策が可能ですが、電子制御の場合には、目視判定が簡単でない理由から不具合の再現が難しいケースも発生しています。ソフトウェアのプログラムなのですから、バグが絶対にないことは保証できないのですが、不具合であることの判断や原因特定に時間がかかる、といったことが電子化による不具合の特徴です。
電子化は、自動車や電化製品の性能向上や生活環境の改善などに対し大きく貢献してきましたが、システムが複雑になるに従って、予期しない不具合を引き起こす可能性が高くなります。それを防止するためには、ソフトウェア単体の品質保証だけでなく、企業間や部門間を連携し、メカ・エレキ・ソフトの整合を取った検証や確認が実施できる体制やプロセス構築が必要になります。また、同時にシステム開発のプロセスの透明性の確保や、機能安全に関する新規格や標準化を進めるような対策もより重要になってくるのではないでしょうか。
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