人・設備・モノのムダを見つけて改善する。製造業の原価低減に欠かせない3つの要素のムダを発見するために、インダストリアル・エンジニアリングにおける改善の技術を紹介していく。
「分析結果のまとめ(改善の検討)」は、「方法改善の手順」中の第3ステップ(方法改善の技術(2)・図1を参照)です。問題の解決や改善を行うために、「方法改善の技術(2・3)」では、分析手法を使って問題を数値として顕在化しました。
次の段階では、その分析結果のまとめとして、グラフなどによって収集したデータを図で表し、その結果に基づいて「改善の検討」を行うステップです。
データの図示化の目的は、現状の悪さ加減と、問題の発生原因を明らかにしていくことにあります。分析結果をまとめる際には、統計的手法を用いて測定結果をまとめること、過去の実績や標準値と測定結果を比較してみること、測定値の不足や追加の測定項目を決定するなどが要点となります。また、収集したデータの図示化は、特に以下の事項に効果的です。また、よく活用されるグラフについて「図1・主な図示方法の種類と特徴」に、その概要を説明しておきましたので、ご活用ください。
名称 | 内容・特徴 |
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2つ以上の数量の大きさを適当な幅の棒の長さで表して比較する図である。パレート図も、その一例である。一単位の表示に、内容の特徴を表す絵を用いたものを絵グラフと呼ぶ。縦横棒グラフでは縦の方が一般的である | |
測定値の存在する範囲をいくつかの区間に分けた場合、各区間を底辺とし、その区間に属する測定値の出現度数に比例する面積を持つ柱(長方形)を並べた図である。また、データー数が100以下の場合の組数は、6〜10が適当である。分布の形を見ることができ、問題が平均値にあるのか、バラツキにあるのかを見極めて改善対策を行うことが大切である | |
数量の変化の状態、特に時系列の変化を表す図で、関数グラフあるいは線図、経過図表と呼ばれることもある。時系列変化を直感的かつ全体的に把握することに、最大の利用価値がある。また、時系列数値の変動を見る場合、移動平均線が分かりやすい | |
いくつかに分類した項目が、どの位の割合になっているのか、円を区切って表した図で、構成割合を比較することに一番の狙いがある円の中に同心円を書いて、大区分または別の区分を表示するドーナツグラフも円グラフの一種である | |
幅広い棒を分類項目の比率に応じて区切ったもの。棒グラフ(大きさの比率)と円グラフ(割合の表示)の特徴を合わせ持っているため、100%内訳棒グラフとも呼ばれる。縦横型では、横型の方が一般的である | |
各項目ごとのバランス(全体としての片寄り、平均値と各項目との関係)および目標値に対する達成度を把握するなどに用いられる同心円グラフ。項目を5点法で評価するときは5個の同心円を書き、一番外側を5点、内側を1点とし、項目の評価点を直線で結ぶ。事例の項目数は8であるが、8項目くらいまでが適切である | |
表4 計画書の内容 |
分析によって、その作業に関するいろいろな事実収集の終了後は、現在の作業方法について、1つずつ批判的な検討を加えて問題の摘出を行っていきます。この検討のステップは、問題を摘出して、次の新方法の立案に導く重要な段階でもあります。
問題の摘出に当たっては、各現象には必ず原因があり、それぞれの現象を改善していくには、その原因を改善することが必要です。すなわち、より「源流のレベルで改善する」ことを心掛けなければならないといえます。
問題点と、その原因の摘出には、既出の分析手法や分析結果の図示方法などの併用も効果的な検討を行うための一助となります。また、「表1・分析結果の検討内容」は、改善の検討を行う際の要点をまとめたものです。
No. | 項目 | 解説 |
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1 | 現状の作業方法を否定してみる | 「現在のやり方以外に方法はない」「現在のやり方が唯一最良の方法」と思い込んでいる場合がかなりある。特にその仕事を古くからしている人たちほど、その職場に長くいるほど、そうした観念にとらわれている |
2 | 真因を見極め、大きな問題から検討を加える | 重箱の隅をつつくような小さな問題にいくら取り組んでも、得られる効果は小さい。問題の大きいもの、改善効率がいいもの、時期的に早く、安く実施できるものなどから順に検討を加えていくこと |
3 | 内容の検討に際して関係者の意見も聞くこと | 事前に相談のないままにまとめられた改善案は、たとえいいものであっても試行・実施の段階で現場の協力が得にくいものである。また、その作業がそうせざるを得ない何かの理由があるかもしれない。その職場の事情や作業に精通した関係者の意見を聞くことや、協働で検討することは重要なことである |
4 | 5W1Hをベースに、基本的な質問を行う | 分析によって現状の事実が集められたならば、その作業の目的、場所、順序、作業者、手段などを検討するために、分析した個々の結果についてチェックリスト的に5W1Hの質問を行い、疑問を投げ掛けることで、その理由を明らかにする |
表1 分析結果の検討内容 |
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