人・設備・モノのムダを見つけて改善する。製造業の原価低減に欠かせない3つの要素のムダを発見するために、インダストリアル・エンジニアリングにおける改善の技術を紹介していく。
本編は前回の続きで、「方法改善の手順」の第2ステップ「詳細分析」の追加解説として、代表的な分析手法について、その活用方法などを含めた詳細を説明したいと思います。
改善を始める際には、必ず分析手法を使うといっても過言ではありませんが、改善を行うに当たっては、初めに問題ありきで、その問題の程度を把握したり、それを評価するための顕在化の手段として「分析手法」は広く活用されています。
「分析手法」というと、何やら難しく考えてしまいますが、慣れてしまえば便利なツールとして誰でも容易に改善活動に役立てることができます。この回で解説する手法は、まさに改善活動を効率的に進めていくために、より多く活用されている便利な手法ばかりを選び出しました。
分析手法としては、たくさんありますが、ここでは改善活動で日常的に活用される手法を選んで説明します。いずれも製造現場でよく活用され、改善のための分析手法としては定石的な現場向きの手法ばかりです。「このような問題であれば、この方法で調べてみよう」あるいは「取りあえずは、データを採ってから考えてみよう」といったときに、「表1 各種手法の概略と選択基準」や、図1〜8までの分析手法の解説は、目的に対する最適な分析手法をマッチングさせる場合に大変便利です。
適切な分析手法を選択することは、現場改善を科学的にアプローチしていく際には欠かせないことですし、また、現場改善力を強化していく意味でも、とても大切なことです。
IE(Industrial Engineering)における研究対象は、主として生産現場における諸活動ですが、その分析を行うためには、いくつかの基本的な手法があります。それらを大別すると次の2つに分類できます。
工程分析(単純工程分析、製品工程分析、帳票工程分析など)と、その付帯分析(流れ分析、経路分析、能力分析、余力分析、日程分析、運搬分析など)
動作分析(サーブリック分析なども含む)、時間分析(PTS法なども含む)、ワーク・サンプリング法、メモ・モーション分析およびその付帯調査(機械、設備、治工具、測定器具などの物的な条件、加工精度、加工条件などの方法条件、作業者そのものや作業者に影響を及ぼす環境条件などの分析など)があります。
分析された個々の要素について、その現れ方や結果に対する影響の度合いなどを考えて改善の重点を把握します。「実践! IE:方法改善の技術(2)・目標の設定」の項でも述べましたが、品質(Q:Quality)、原価(C:Cost)、納期(D:Delivery)、生産性(P:Productivity)、安全(S:Safety)、士気(M:Moral)と、分析結果がどのような結び付きがあるかを突き詰めていきます。
例えば、物が長期間にわたり工程間で停滞すると、時にはさびやほこりなどにより品質上の問題が生じたり、時には納期遅延を引き起こしたり、時には資金の回転が悪化して原価面で問題となったり、また、仕掛かり品の増加による安心感から士気が低下したりと、さまざまな面での影響が容易に想定されますが、個々の要素に対する改善の目標は、その重要度(重点)によって決めなければなりません。
しかし、個々の要素に対する改善の目標は必ずしも同じ重み付けとは限りませんし、また、互いに矛盾してしまう場合もあります。最終の改善案とは、これらの個々の要素の改善案を総合したものですから、個々の改善の目標を総合して大局的に考えなければなりません。最終的な改善案の目標や重点は、一般的には次の4つの目標に集約されます。
4つの目標の軽重は、時として変わってくることは当然のことといえます。例えば、売上高が安定している傾向にあるときは、「疲労の軽減」「品質の向上」「時間の短縮」「経費の節減」の順であろうかと思いますが、市場での競争の激しいときには、「経費の節減」と「品質の向上」が重点となるでしょう。
士気(M)を向上させるためには、人間関係の改善などの施策が考えられます。また、品質(Q)の向上には、品質の安定が前提となり、その上に販売競争に打ち勝つための品質向上が考えられなければなりません。生産性(P)の向上は、換言すれば単位生産量の加工時間の短縮です。これにより、原価を引き下げることもできますし、納期(D)を短縮することも可能となります。最後にあらゆる資材・資源を節約し、間接費を削減していくことによって原価(C)を低減していくことは、私たちの欠くべからぬ責任であるといえます。
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