企業活動を客観的な数値で把握する情報として、決算書として作成される損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書などは重要な情報源の1つとなります。
しかし、会計情報は定期健康診断でしかなく、「いま、あなたの状態はこうなっています」ということしか分かりません。
定期的な健康診断も確かに重要ですが、これは「いつ病気や事故に遭うか」までは教えてくれません。
病気や事故だけでなく、人生におけるチャンスに対してうまく対応するためには、自分の体の状態だけを把握するのではなく、周りの環境に対して情報を収集・吸収することが必要となります。
財務諸表で表現されている情報は1年前の活動結果にほかなりません。また管理会計として報告される情報も四半期や1カ月前の過去の情報です。過去の情報をどれだけ分析しても未来を大きく変える力にはなりません。
一方で、製品コストの70%が設計段階で決まるといわれています。また製品が一番売り上げを上げるタイミングは新製品を出した直後ともいわれています。
新製品のリリース直後に機会損失があると、それをリカバリするためのマーケティングに多くの時間とコストを投入する必要が出てきます。
製品開発の情報を上手にコントロールすることで、市場のルールや相手の戦略に対し柔軟に対応し、市場というゲームの場所を支配していくことができます。そのために必要なマネジメント情報はそれほど複雑なものではありません。
ここで必要になる情報の一例として、次のようなものが挙げられます。
例えば、設計変更の種別や発見工程の統計を見れば、日々の設計変更の内容がどのような性質が多いのかが把握できます。設計変更の性質が分かれば、原価低減のためのVE活動が多いのか、それとも不具合による設計変更が多いのかによって対処方法を検討できます。
不具合対応の設計変更の割合が増えてきている場合は、設計・製造工程に何らかの潜在的な不具合が発生していると想定できます。このようなノイズはいち早く取り除くようにしなければいけません。
また、不具合の発見ポイントが製品ライフサイクルの工程のどこに当てはまるのかをマッピングすることで、市場に出回ってから不具合が発見されているのか、それとも量産前に発見される傾向が高いのかを見ることができます。
こういった情報をベースにすることで、これから市場に出ていく製品に対して市場で優位に立てる対策を立案していくことが可能となります。
ここまでで、製品開発〜市場投入までをコントロールするために必要な情報とその活用の仕方を見てきました。しかし、このような情報がマネジメント情報としてリアルタイムに経営層に提供されているでしょうか?
個々の情報は集めるに複雑な数式を用いるわけではありません。しかし情報が管理されていないと、集め、分析するのに膨大な時間と労力を要します。
プロダクト・ライフサイクル・マネジメントとは「製品情報をプロダクトのライフサイクルにわたって一元管理し、関連する部門間の情報伝達スピードの向上と正確なデータへのアクセスを実現する製品情報版大福帳型データベースであるPLMシステムを活用することで、製品の不具合に対する早期対応や手戻り工数を削減することが可能になり、結果として製品開発期間の短縮や製品品質向上及びコスト削減」を実現するための製品戦略です。
昨今の顧客の嗜好の多様化による多品種少量生産を余儀なくされる企業にとって、プロダクト・ライフサイクル・マネジメントは顧客に受け入れられる機能を持った自社の製品を生み出し、いち早く市場に投入し、収益を拡大する戦略を取るためには必須の戦略といえます。
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今回はプロダクト・ライフサイクル・マネジメントというマネジメントビジネスモデルの必要性と考え方をご紹介しました。プロダクト・ライフサイクル・マネジメントを実現し、定着するためにはPLMシステムが必要になってきます。しかしPLMシステムを満足のいく形で導入されている企業はそれほど多くありません。
次回は、PLMシステムの導入が失敗している要因を分析し、PLMシステム構築を失敗させないためにはどうすべきかについて紹介していきます。
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