リアルなものづくりを支援するPLM ― Teamcenterものづくり支援ソフトウェア製品レポート(3)(1/3 ページ)

製造業を取り巻く厳しい経営環境の中で、高い次元のQCDを達成するにはITツールによる業務支援が不可欠である。本連載はPLM、ERP、SCMなど製造業向けの代表的な業務支援ソフトウェアの特徴をレポートしていく。

» 2009年03月11日 00時00分 公開
[上島康夫,@IT MONOist]

 自動車や航空機といった複雑で部品点数の多い機械製品の設計に使われるハイエンドCAD製品は、かつてCATIA(仏ダッソー・システムズ社)、Pro/ENGINEER(米PTC社)、I-deas(米SDRC社)、Unigraphics(米UGS社)が4大ブランドだった。2001年にSDRCとUGSが合併し、両社のCAD製品を統合して現在のNXが誕生したことはご存じだろう。2007年にUGSは独シーメンスに買収されシーメンスPLMソフトウェアとなり、シーメンスの産業オートメーション事業部に属する一部門となった。

 本稿で紹介するのは、シーメンスPLMソフトウェアのPLM製品「Teamcenter」である。PLMの世界シェアはTeamcenterに加えて、ENOVIA(ダッソー)、Windchill(PTC)、SAP PLM(独SAP社)が競合している。各社のPLM製品は基本コンセプトこそ共通だが、広範な業務領域を対象としているため製品構成や実装されている機能は各社各様であり、単純な製品比較は成り立たない。そこで本稿ではTeamcenterが持つ多くの機能のうち、「リアルなものづくりとバーチャルなものづくり」の接点である製造支援の部分に絞って紹介していく(本稿の作成に当たって、2009年2月にシーメンスPLMソフトウェア日本法人技術本部のプロダクト担当者に取材を行い、その内容を編集部でまとめた)。

シンプルなPLM製品ポートフォリオ

 ものづくり企業にとって製品のライフサイクル全体を通して、設計情報や部品データなどさまざまな情報を一元的に管理したいというニーズは年々高まっている。これに対応すべく、PLMベンダは各種のソフトウェア製品群を投入して、その全体をPLMソリューションと位置付けることが多い。その基本構成は、製品データ管理ツールであるPDMを中核にして、CAD/CAM/CAEといった設計ツールやビューア、デジタルマニュファクチャリングツールなどを連携させていくというものだ。まずはシーメンスPLMソフトウェアのPLMソリューションを提供する製品ポートフォリオ全体を見てみよう。

NX CAD/CAM/CAEといった設計ツール

Tecnomatix デジタル・マニュファクチャリング支援ツール

Solid Edge 3次元CAD

Teamcenter PLM基盤

PLM Components オープンなソフトウェアツール

Velocity Series 中小規模向けのPLM

 他社の製品構成と比べてシンプルに感じられるかもしれない。しかし、CAE解析機能がNXに内包されていたり、3次元データのビューアがTeamcenterから提供されているなど、1つの製品に多くの機能が含まれる傾向があるためで、一般的なPLM製品に見られる機能について特に不足があるわけではない。製品ライフサイクルのうち、入力となるオーサリングツールがNXで、最終的に製造部門に渡す部分をTecnomatixが担当し、その両者間をつなぐデータの流れにおいて、さまざまなデータ管理機能やコミュニケーション機能を提供するのがTeamcenterだと思えばいいだろう。最新バージョンであるTeamcenter 2007の提供する機能は、

  • システムエンジニアリングと要件管理
  • サプライヤリレーション管理(SRM)
  • 戦略企画管理とプロジェクトリソース管理
  • メカトロニクス管理
  • 設計プロセス管理
  • 製造プロセス管理
  • BOM管理
  • 解析プロセス管理
  • 規制適合性管理
  • メンテナンス/修理/オーバーホール管理

という10項目に及ぶ。これらを支える情報基盤として、一元管理された統合データベースとWebベースの共通コミュニケーションインフラを持ち、製品の企画から設計、製造、保守、廃棄に至る製品ライフサイクル全体をサポートするのである。

生産現場の声を反映させたPLM

 同社の前身企業をたどっていくと米国大手製造企業の名前が挙がってくる。その社内IT組織が自社用のデータ管理システムを内製していたのがTeamcenterの出自であるという。生産現場からの要求に応える宿命を負ってきたTeamcenterは、リアルな工場の生産現場まで視野に入れた製品コンセプトを持っている。少し詳しく見ていこう。

 ものづくりの工程を図1のように、左にバーチャルな世界である製品開発、中央に生産準備、右側にリアルな世界である工場としてみよう。製品開発の世界では、3次元CADなどのオーサリングツールのデータが設計BOMやPDMといった形で管理されている。

 次の工程となる生産準備では、設計工程と比べて管理しなければならない情報量は増大する。例えばある部品1つを作るために、必要な治具を用意したり、具体的にどのラインで組み立て作業を行うのか、そのラインはどこの工場にあるのかといった場所の情報も必要だ。また生産準備に関係する人の数も多い。生産を設計する人、工程を計画する人、ラインの作業時間を測定している人、現場での作業指示書を書く人もいる。ここにはオフィスワークしている人もいれば、工場で作業している人もいる。こうした人たちが紙ベースのドキュメントで情報を個別に管理していると、情報の錯綜(さくそう)や混乱が多発しかねない。

図1 従来の製品開発・生産準備・生産環境 図1 従来の製品開発・生産準備・生産環境

 せっかく製品開発の段階まで設計情報をPDMによって一元管理していて、さらに設計BOMから製造BOMへと正しい情報が流れていたとしても、その後工程である生産準備でデータが分断されていては、正しいものが正しいタイミングで作れない。PDMの世界、つまりエンジニアリング・プロセスと生産現場である工場のマニュファクチャリング・プロセスとでは必要な情報が異なるのである。

 この2つの世界を結び付けるため、Teamcenterでは「Bill of Process」と呼ばれる製造プロセス管理(工程BOM)の考え方を導入している(図2)。一般的なPLM製品でも設計BOMと製造BOMという2つの部品表の対応付けは行われているが、工程BOMには部品情報に加えて工程、設備、治具などの情報、それをどの工場のどのラインに投入するのかといった場所の情報まで保持するという。

 工程BOMによって2つの世界が連携していると、設計データに変更が生じた場合、設計BOMと製造BOMとの連携で正しい部品が調達されるだけでなく、その先の製造プロセスで生じる変更まで、正しくリアルタイムに工場の担当者に伝わるメリットが生まれる。設計変更された部品をどこの工程に割り付けたらよいのか、また治具に変更は必要なのかなどは、設計者が特別な連絡をしなくても製造部門に伝わり、コミュニケーションミスによる損失を防げるわけだ。

図2 Teamcenterの製造プロセス管理(工程BOM) 図2 Teamcenterの製造プロセス管理(工程BOM)
ものを作るために必要な「製品(何を)」「工程(どうやって)」「工場(どこで)」「リソース(何を使って)」を関連付けて管理する生産準備のためのデータベースシステム
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