リアルなものづくりを支援するPLM ― Teamcenterものづくり支援ソフトウェア製品レポート(3)(2/3 ページ)

» 2009年03月11日 00時00分 公開
[上島康夫,@IT MONOist]

デジタル・マニュファクチャリング

 設計から製造、さらに工程管理まで一元化されたTeamcenterのデータ管理基盤を使って、工場や工程の設計をバーチャルな世界で行うためのツールがTecnomatixである。いわゆるデジタル・マニュファクチャリングの世界だ。Teamcenterでは3次元CADで作ったデータがどの工場のどのラインのどの位置で組み立てられるかといった情報まで保持できるので、設計データと工場のリアルな世界が途切れることはない。Teamcenterのデータを入力にして、Tecnomatixでリアルな製造工程をシミュレートすることで、PCの仮想空間で工場のレイアウトを組み立てたり工程の設計が可能となる。

 こうしたバーチャルな世界とリアルな世界を結び付けるPLMを目指す同社は、リアルな製造企業であるシーメンスのグループに参加したことで、よりリアルな世界との融合を強化していこうとしている。その1つは、PLC(プログラマブルロジックコントローラ:Programmable Logic Controller、シーケンサー)を使った工作機械の制御プログラムを、バーチャルな世界でシミュレーションする「バーチャルコミッショニング」だ(図3)。

 従来、PLCプログラムの検証作業は、実機の設置されている工場へ行かなければできなかったが、バーチャルにプログラムをシミュレーションできれば、工場に行くかずとも不具合を発見できるようになる。PC上で作成した仮想の製造設備をPLCプログラムの制御命令で動かしてみる。もし干渉などの不具合があれば、バーチャルな世界で発見、修正できるし、さらにCADへフィードバックして部品の形状を工作機器に合わせて修正することも簡単だ。

図3 実機PLCを接続した制御ロジックの検証(バーチャルコミッショニング) 図3 実機PLCを接続した制御ロジックの検証(バーチャルコミッショニング)
PLCプログラムをバーチャルな工場で検証し、干渉などの問題を解決してから工場へ投入できる

 同社によればNCマシニングコントローラについては当面Siemens製コントローラを接続できるバーチャルNCシミュレータの開発を進めているが、PLCやSCADAとしてはSiemens製品だけではなく、オープン規格に対応している機器についてもサポートしていく意向だという。

リアルとバーチャルの交差点

 PLM製品としてのTeamcenterがカバーする領域は、図4にある横軸のエンジニアリングチェーン、つまり製品の要件をまとめ、設計し、工場の生産計画を立て、量産に移行し、販売後のサポートが終了するまでの技術情報を支援する。一方で、縦軸にサプライチェーンとして企画、受注、購買・調達、生産管理などCRM、SCM、ERPといったビジネス軸の領域があり、両者は製造のところで交わってくる。

図4 製造業に必要な2軸の業務プロセス領域 図4 製造業に必要な2軸の業務プロセス領域

 サプライチェーン軸にあるERP的な世界は、計画的に大量生産していくうえでの生産効率化に資するシステムだ。現在は逆に、生産調整や生産削減が行われる時代に入ってきた。そこで、横軸であるエンジニアリングチェーンも生産調整に適応できなければならないが、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンが交わっている製造の部分がきちんとリンクできていないと、変動する生産量に追随していけなくなるという。つまり、PLMだけが大切なのではなく、サプライチェーン軸との連携も重要なのだ。

 設計と製造の情報をBOM連携でシームレスにつなぐことに加えて、Teamcenterで管理する情報をERPへ素早く正確に反映させられれば、先行手配を掛けられるといったメリットが出てくる。ERPの代表的な製品であるSAPとの連携では、「Teamcenter Gateway for SAP」といったモジュールも用意されていて、Teamcenterで作成したBOMをSAPに転送できる。またTeamcenterでは、他社システムと連携するためのインターフェイスをオープンにしているから、SAP以外の製品との連携も可能だ。

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