どうしても慢性不良が目に見えない場合は、データを取って、データ分析しながら、頭で不良発生のメカニズムを考えるしかありません。基本的に慢性不良の改善は、未知の要因を見つけることが大切で、既知の要因をいくらデータ分析しても、ある程度は改善できても劇的には解決しません。従って、データ分析は未知の要因が見つかっている状態で行います。
未知の要因を見つけ、改善の糸口がつかめたら、既存データを使ったり、新たにデータを取得したりして、データ分析を行います。データ分析では、発見した未知の要因に影響を与えそうな製造条件をブレインストーミングで列挙していきます。
パイプの内圧割れの事例でいえば、パイプの肉厚が波打っているということをつかみました。では波打ちになる製造条件は何だろうと探ることになります。製造には5Mの要素がありますから、ブレインストーミング時にチェックリストとして活用してください。
原料、部品(Material) メーカー別、ロット別、産地別、サイズ別など
機械設備(Machine) 号機別、工程別、新旧機械別、金型別、治具別など
製造方式・製造条件(Method) 加工方法別、各種製造条件別、時間別など
作業者(Man) 経験別、年齢別、男女別、班別など
測定(Measurement) これは、「プログラム4-1 測定の信頼性(ゲージR&R分析)」で確認済み
データ分析では、こういった層別(データを分類すること)をいかに丁寧に行うかがポイントになります。ちなみに層別はQC7つ道具の1つです。
相関分析はデータ分析で最もよく使うツールです。相関とは、2つのモノのかかわり具合をいいます。一般的な例では、地上からの高さと気温、湿度と洗濯物の乾き具合などです。従って、慢性不良にかかわりのある要因を相関分析で探ることになります。
散布図の例を図3に示します。散布図もQC7つ道具の1つです。散布図はExcelを使えば簡単に描けます。Excel 2007の場合、たったの3ステップです。
図3のグラフを見ただけでも、相関が強いことは分かります。相関が弱いとグラフは直線状にならず、点がばらばらに分布します。相関の度合いは数値として表すことができ、相関係数といいます。相関係数を手計算でやろうと思うと何ステップか計算しなければならず手間が掛かります。しかし、Excelの関数を使えば簡単に計算できます。便利なツールを使わない手はありません。
相関係数は1もしくは−1に近いほど、相関が強いと判断します。相関分析上の注意点は2つあります。相関係数は直線状の傾向を測る尺度ですので、曲線状の傾向は不向きです。また、あくまで相関関係を表すものであって、因果関係を表すものではありません。
算数の成績が良い子は理科の成績も良いという相関があったとします。だからといって理科の勉強を頑張れば、算数の成績も上がるというわけではありませんよね。論理的な思考能力とか、要因は別のところにあるはずです。ですので、相関分析をするときは「それは本当に因果関係があるのか?」と一呼吸置いて再確認してください。
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慢性不良を見える化し、不良が発生する瞬間を見ることができれば、未知の要因が見つかるはずです。そして慢性不良発生のメカニズムを立証できたら、プログラム4の要因解析は終了です。最終回はタグチメソッドによる対策検討です。慢性不良撲滅まであと一歩です。
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