品質改善プロジェクトに失敗は許されない品質改善の王道を行こう(1)(1/3 ページ)

モノづくり現場で発生している品質不良を改善し、不良率半減を目指そう。品質改善のツールはあくまでもツールであって、それに振り回されてはいけない。本連載は品質改善コンサルタントによる品質改善の王道を解説する。

» 2008年07月11日 00時00分 公開

最初にツールありきだと失敗する

 世の中にはQC7つ道具や各種の統計解析ソフトなど、たくさんの品質改善ツールがあります。シックスシグマやタグチメソッドをツールとして理解している人もいるかもしれません。それらのツールについて、企業の社内研修や社外セミナーで習った人もいると思います。さて、そういったツールを実際に使いこなせているでしょうか。

 ツールの内容が高度過ぎて理解できない、機能が多過ぎて使いこなせないとか、ツールの使い方は理解したけれど、どの場面でどう使うか分からないなどの理由で結局、

使いこなせない → あのツールは役に立たない

になっていないでしょうか。もっと極端な例を挙げると、

各種の条件を入力すると、解析してパッと答えが出るような品質改善ソフトはありませんか?

と聞いてくる人もいます。

 雑誌の折り込み広告やWeb上で、競馬予想ソフトとか、株価予想ソフトなどが、さも的中するように宣伝されていますが、それが本当なら世の中はお金持ちだらけになります。それと同じで、一発で答えが出るような品質改善ソフトやツールはないと思ってください。

 よく探せばその業種・製造方式に特化したソフトはあるかもしれません。しかし、設備投資により生産設備が高性能のものに代わったり、新製品に切り替わったりしますから、そういったソフトが即対応できるとも思えません。

 品質改善は、最初にツールありきだと失敗しがちです。そもそも品質改善に本当にツールが必要かというと、ツールがなくても解決できることが多く、むしろ品質改善の考え方が重要なのです。品質改善には「改善の考え方」が先にあって、改善を早く(効率的に)進めるのがツールとしての役割です。

 世の中に横文字の新しいツールが出るたびに、勉強して試してはダメだった、なんていう話はよく聞きます。品質改善の考え方さえしっかりと理解していれば、ツールに完全に頼らずとも、改善できるはずです(パソコンとExcelには頼るところ大ですが……)。

 日本は品質立国ですから、品質改善の考え方は、昔からあります。いわば「品質改善の王道」です。1つ1つの目新しさはないかもしれませんが、それを生かさない手はありません。やはり基本を押さえることは重要です。これから先の長い間、皆さんは品質問題に付き合っていくわけですから、品質改善の考え方をきちんと押さえておけば、とても貴重な知的財産になるはずです。

 本連載記事では、品質改善の考え方を体系的にまとめ、各種ツールとのかかわり方、生かし方について書いていきます。想定しているのは、工場でいつも同じ不良で苦しんでいる(慢性不良)、製造・品質・技術部門の若手・中堅の技術者や管理職の方々です。

品質改善の王道とは

 これから紹介する品質改善の王道とは、問題解決型QCストーリーをベースとして、要因解析のアプローチ方法とプロジェクト体制の構築により、改善ストーリーを強化したプログラムです。

 慢性不良といった問題がある場合、基本的な対処法は「問題解決型QCストーリー」です。問題解決型QCストーリーにおける「QC」とは、

Quality Control = 品質管理

のことです。

 「問題」とは、慢性不良という現実があって、不良を良品という「あるべき姿」に近づけたいということになります。抽象的にいうと「問題とは理想と現実のギャップ」になります。数式でいうと、

問題 = 理想 − 現実

です。ただし、問題を認識するだけではダメで、問題意識を持たなければなりません。つまり、

慢性不良があると知っているだけではダメ。慢性不良を改善しよう、理想に近づけようという改善意欲、やる気(=問題意識)がより大切ですよ

ということです。皆さんは慢性不良に対する問題意識を持っていますか?

 ちょっと横道にそれましたが、問題解決型QCストーリーとは、慢性不良のような問題を解決する(理想に近づける)ための品質管理的な手法(手順)ということになります。

 「QCでは本当に困っていることが改善できない」とか「QCでなくとも解決できる」などと批判される面もあり、QCの知識がある人にとっては「なんだQCか〜」と思うかもしれません。だけど、もうちょっと読んでください。

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