組み込みLinuxのメリットと弱点は何か?組み込みLinux業界動向(1/2 ページ)

携帯電話や情報家電市場の活況で、組み込み分野が面白くなっている。その中でLinuxはどのような存在なのだろうか?

» 2004年11月26日 00時00分 公開
[近藤 純司 富士通プライムソフトテクノロジ,@IT MONOist]
追記:2006年9月26日
本記事から約2年後、あらためて最新事情をまとめた「組み込みLinux最新業界動向2006」を公開しました。併せてご覧ください。

組み込み業界の動向

 あらゆるサービスや機器が相互に接続可能となるユビキタス・コンピューティングの世界では、PCや情報端末ばかりでなく家電製品にもコンピュータが内蔵される。このような組み込み機器を製造する現場で、Linuxの採用が注目を集めている。本稿では、組み込み業界の動向を紹介するとともに、その中でのLinuxのポジションを解説する。

組み込み機器とは?

 組み込み機器についてはさまざまな定義があるが、ここでは、

  • PCとは異なり自律して動作する

または、

  • キーボードやマウスなどよりもユーザーフレンドリーなユーザーインターフェイスを持つ

機器を想定する。表1に挙げた例でイメージしていただきたい。

個人向け 業務用
携帯電話
携帯情報機器
カーナビ
家庭用電話機
携帯ゲーム機
家庭用ゲーム機
HDDレコーダ
DVDレコーダ
セットトップボックス
通信機器
カラオケ機器
ロボット
航空、鉄道などの輸送機制御
ミサイル/ロケット制御
プラント制御
表1 組み込み機器の種類

 この中でも、携帯電話や薄型テレビ、DVD/HDDレコーダ、カーナビ、デジタルカメラなどの情報家電機器が、出荷台数や売り上げ規模から特に注目されている。

 このような組み込み機器は、表2に示すような、PCとは異なる特徴を持っている。

比較項目 組み込み機器 PC
CPU性能 数十~数百MHz 数GHz
搭載メモリ量 ~数十Mbytes 数百M~数Gbytes
電源 バッテリ駆動の場合あり
(省電力対策が必要)
安定した電源
入力手段 ・タッチパネル
・ハードウェアキー
・リモコンなど
・キーボード
・マウスなど
性能 ・高速立ち上げ
・電源オフで即座に停止
携帯性 ・ファンレス設計
(小型筐体・静音)
・低発熱設計
信頼性 長時間の連続動作
アプリケーション リアルタイム処理が必要な場合あり
開発手法 PC上でクロス開発 PC上でオウン開発
表2 PCと組み込み機器の比較

 しかし、組み込み機器で求められるアプリケーションの著しい高性能化に伴い、以下のようなPCと共通の要件も求められてきている。

  • ネットワーク機能
  • 表現力豊かなグラフィカルユーザーインターフェイス
  • マルチメディア対応(JPEG、MP3、MPEG4、MPEG2、WMA、……)

データで見る業界動向

 機器の高機能化に合わせて、採用されるプロセッサは32bitのものが主流となるとともに、ソフトウェアの開発量は著しく増加し続けている。一方、競争力のある製品を投入するために、開発サイクルは短縮される傾向にある。このような状況で、従来のアセンブリ言語による開発は困難であり、ソフトウェアの生産性を向上させる目的でOSの重要度が増してきた。

 これを裏付けるデータが、社団法人日本システムハウス協会(http://www.jasa.or.jp/)と社団法人トロン協会(http://www.assoc.tron.org/jpn/)により提供されている。

 「2003年度 組込みシステムにおけるリアルタイムOSの利用動向に関するアンケート調査報告書」によると、「組込みシステムに使用したプロセッサ」の61.4%を32bitプロセッサが占めている。また、「組込みシステムに組み込んだOS」で主要なものは、ITRON仕様OSが32.7%、Linuxが13.3%、VxWorksが7.8%、Windows系が5.7%、自社用独自が8.2%、そしてOSなしが21.1%となっている。このうち、Linuxは前年比2.4ポイントの増加(2002年度10.9%→2003年度13.3%)で着実にシェアを伸ばしており、評価と試作の段階を終えて製品への搭載が進んでいる。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.