携帯電話や情報家電市場の活況で、組み込み分野が面白くなっている。その中でLinuxはどのような存在なのだろうか?
あらゆるサービスや機器が相互に接続可能となるユビキタス・コンピューティングの世界では、PCや情報端末ばかりでなく家電製品にもコンピュータが内蔵される。このような組み込み機器を製造する現場で、Linuxの採用が注目を集めている。本稿では、組み込み業界の動向を紹介するとともに、その中でのLinuxのポジションを解説する。
組み込み機器についてはさまざまな定義があるが、ここでは、
または、
機器を想定する。表1に挙げた例でイメージしていただきたい。
個人向け | 業務用 | |
---|---|---|
携帯電話 携帯情報機器 カーナビ 家庭用電話機 携帯ゲーム機 家庭用ゲーム機 HDDレコーダ DVDレコーダ セットトップボックス |
通信機器 カラオケ機器 ロボット 航空、鉄道などの輸送機制御 ミサイル/ロケット制御 プラント制御 |
|
表1 組み込み機器の種類 |
この中でも、携帯電話や薄型テレビ、DVD/HDDレコーダ、カーナビ、デジタルカメラなどの情報家電機器が、出荷台数や売り上げ規模から特に注目されている。
このような組み込み機器は、表2に示すような、PCとは異なる特徴を持っている。
比較項目 | 組み込み機器 | PC |
---|---|---|
CPU性能 | 数十〜数百MHz | 数GHz |
搭載メモリ量 | 〜数十Mbytes | 数百M〜数Gbytes |
電源 | バッテリ駆動の場合あり (省電力対策が必要) |
安定した電源 |
入力手段 | ・タッチパネル ・ハードウェアキー ・リモコンなど |
・キーボード ・マウスなど |
性能 | ・高速立ち上げ ・電源オフで即座に停止 |
− |
携帯性 | ・ファンレス設計 (小型筐体・静音) ・低発熱設計 |
− |
信頼性 | 長時間の連続動作 | − |
アプリケーション | リアルタイム処理が必要な場合あり | − |
開発手法 | PC上でクロス開発 | PC上でオウン開発 |
表2 PCと組み込み機器の比較 |
しかし、組み込み機器で求められるアプリケーションの著しい高性能化に伴い、以下のようなPCと共通の要件も求められてきている。
機器の高機能化に合わせて、採用されるプロセッサは32bitのものが主流となるとともに、ソフトウェアの開発量は著しく増加し続けている。一方、競争力のある製品を投入するために、開発サイクルは短縮される傾向にある。このような状況で、従来のアセンブリ言語による開発は困難であり、ソフトウェアの生産性を向上させる目的でOSの重要度が増してきた。
これを裏付けるデータが、社団法人日本システムハウス協会(http://www.jasa.or.jp/)と社団法人トロン協会(http://www.assoc.tron.org/jpn/)により提供されている。
「2003年度 組込みシステムにおけるリアルタイムOSの利用動向に関するアンケート調査報告書」によると、「組込みシステムに使用したプロセッサ」の61.4%を32bitプロセッサが占めている。また、「組込みシステムに組み込んだOS」で主要なものは、ITRON仕様OSが32.7%、Linuxが13.3%、VxWorksが7.8%、Windows系が5.7%、自社用独自が8.2%、そしてOSなしが21.1%となっている。このうち、Linuxは前年比2.4ポイントの増加(2002年度10.9%→2003年度13.3%)で着実にシェアを伸ばしており、評価と試作の段階を終えて製品への搭載が進んでいる。
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