植物由来の化学物質を安価に生産する技術、事業化に向けて本格始動へ:材料技術
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、同機構の事業から開発された、微生物発酵によって植物由来の希少化学物質を生産する技術について、事業化に向けた本格的な取り組みが開始されたと発表した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2023年6月13日、微生物発酵により植物由来の希少化学物質を生産する技術について、事業化に向けた本格的な取り組みを開始したと発表した。
同技術は、NEDOが2016〜2021年度まで実施した「植物等の生物を用いた高機能品生産技術開発」事業の一環として、2018年に開発された。合成生物学を利用する同技術では、微生物内で植物由来の化学物質を、スケーラブルかつ安価に生産できる。
開発には、石川県立大学をはじめ、神戸大学、産業技術総合研究所、千葉大学、理化学研究所などが携わり、大腸菌内で効率的な植物二次代謝産物の改変型生合成経路を構築することに成功。さらに、20種以上の外来遺伝子を1菌体に導入して適切に発現させる多段階遺伝子導入技術を確立した。
遺伝子発現バランス制御技術や、タンパク質過剰発現耐性菌株などの技術と組み合わせることで、細胞内に20段階以上の生合成経路を構築し、目的物質を培養液1L当たり1g以上と実用生産レベルでの発酵生産が可能になる。伝統的な農業による生産のように、植物の栽培に多くの時間を要する、栽培条件や環境に左右されるといった問題もなく、低コストで医薬品などの原料を供給できる。
この成果を基に、石川県立大学 准教授の南博道氏は、2022年10月に研究開発型スタートアップ「ファーメランタ」を設立している。同社は今般、同技術の2027年の事業化に向けて、本格的な取り組みを開始した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- NEDO、14件のセルロースナノファイバー関連技術の研究開発に着手
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、低炭素社会の実現に向けた「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー(CNF)関連技術開発」事業において、新たに14件の研究開発に着手することを発表した。 - CNFの応用開発と普及を後押し、NEDOと産総研が安全性評価書を公開
NEDOと産総研は、2020年から進めてきた「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」の一環として、セルロースナノファイバー(CNF)を取り扱う事業者の自主安全管理や用途開発の支援を目的とする文書「セルロースナノファイバーの安全性評価書」を公開した。 - 次世代高容量高入出力リチウムイオン電池の開発へ、マツダがNEDO事業で
マツダは2022年4月19日、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が公募する「グリーンイノベーション基金事業/次世代蓄電池・次世代モーターの開発」で、マツダが提案した「次世代高容量高入出力リチウムイオン電池の開発」が採択されたと発表した。 - NEDOがCO2フリーのブルーアンモニアを製造する技術開発に着手
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、燃焼時にCO2が発生しないアンモニアを燃料とする「燃料アンモニア利用・生産技術開発」事業で、ブルーアンモニア製造の技術開発を開始した。 - NEDOが重レアアースの安定確保に向け、未使用資源から分離精製する技術開発に着手
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、未使用の資源や使用済み部素材から重レアアースを分離精製する技術開発をテーマとして採択した。2023〜2027年度までの5年間で、総額17億6000万円の事業規模となる。 - コロナ禍を契機にデジタルシフトできるのか、日本に期待されるイノベーション像
NEDOは2020年7月31日、「2020年度NEDO『TSC Foresight』オンラインセミナー」を開催。同セミナーでは、NEDO TSC(技術戦略研究センター) デジタルイノベーションユニット長の伊藤智氏が「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」をテーマに講演を行った。