ダイカスト
「ダイカスト(ダイキャスト)」は金属鋳造の手法の一種で、金属部品の大量生産技術である。ダイカスト製の部品は自動車で最も多く使用されるが、他にも家電、事務機器、日用品や雑貨と幅広く使われている。また、板金部品を代替する際にも用いられる。
ダイカストは「溶湯」という溶融した金属を金型に圧入した後、冷却して固化して成形する。英語では「Die Casting」という。ダイカストでは非鉄合金を用いる。亜鉛やアルミニウム、マグネシウムの合金がよく使われる。
ダイカストは複雑な形状の部品製作に向いており、表面は美しく仕上がり、寸法精度が高く、しかも生産力が高い。大量かつ低コストに金属部品が量産できる。個々の部品は低コストになるが、金型費用が高価であるため初期投資費用が高額になる。また、部品内部に巣(引け巣:微小な空洞のこと)が生じやすく、それが原因で部品の破断などにつながる恐れもある。
ダイカスト部品の設計においては、鋳造に適した形状にする。平たん部を広くもうけ過ぎずに適度にリブを配置し、肉厚部を設けないように肉抜きし、全体的になるべく薄く均等な肉厚で形状設計することが望ましいとされる。最適な肉厚は部品のサイズや採用する金属などにより異なる。ダイカストの製造性については、CAEによるシミュレーションが行われることもある。
ダイカストは1843年に米国で発明された、活版印刷の活字(字型)を鋳造するための技術が起源である。日本国内で工業用品の製造技術として使われるようになったのは、1900年初頭(明治時代)からであり、太平洋戦争中には軍需品供給で使われた。JIS(日本工業規格)でダイカストに関する規格ができたのは1952年である。戦後には、自動車業界などを中心にダイカストによる部品製造が高度に発展する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 解析精度が向上した鋳造シミュレーションの最新版
日立産業制御ソリューションズは、鋳造シミュレーションシステム「ADSTEFAN Ver.2017」を発表した。解析精度や比較検証精度が向上し、ライセンス管理を活用することで解析時間の短縮にも貢献する。 - 世界初の“凍る”鋳造技術を実用化! 業界常識を覆した町工場の“熱い”挑戦
自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。今回は、世界で初めて「凍結鋳造システム」の実用化に成功した株式会社 三共合金鋳造所の取り組みを取材した。 - 加工方法を知らずに絵を描いていて不安にならないの?
設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。第1回は「設計者がなぜ、部品加工技術について知っておかなければならないのか?」をテーマに解説する。 - 金属板を「切る・抜く・曲げる」――似ているけど違う精密板金加工とプレス加工
設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。第2回は、金属板を“切る・抜く・曲げる”という点で共通するが、実際には異なる加工方法として知られる「精密板金加工」と「プレス加工」について取り上げる。 - 火花のエネルギーで金属を非接触加工する「放電加工」の技術
設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。最終回となる第6回は、「放電加工」について取り上げる。 - 未知なるジェネレーティブデザインを前に砂型鋳造の限界に挑んだ町工場のプロ魂
パーソナルモビリティを開発するWHILLからの要請を受け、ジェネレーティブデザインで設計されたフレーム部品の試作を砂型鋳造でやってのけた中小企業がある。旭鋳金工業(横浜市旭区)だ。砂型アルミ鋳造によるジェネレーティブデザインパーツの国内初事例はどのようにして生まれたのか。従業員7人の小さな町工場を取材した。