メタマテリアル
「メタマテリアル」とは、自然界の物質には存在しない性質を備えた、人工の物質のことをいう。超越を意味する「メタ(meta)」と、材料を意味する「マテリアル(material)」を組み合わせた言葉である。メタマテリアルにおける人工的な構成要素はメタ原子という。メタマテリアルは、新しい化合物を作成するのではなく、原材料の物性は変えずに、超微細な形状パターンにより性質を変化させる。
メタマテリアルでは、物体の中に超微細構造を作り込み、通常の物質とは異なる光の屈折を生み出す。つまり、従来の自然原則の常識にとらわれずに光を制御する材料技術である。この技術では「負の屈折率」を生み出す。負の屈折は従来、存在しないとされてきたが、近年の研究では人工的に作り出さることが明らかになった。光は電場と磁場が相互に作用しながら空気中を広がる。この電場と磁場を人工的にコントロールすることで、通常は人の目に届くことがない微小な光を増幅させたり、視覚では捉えられない角度に光を屈折させたりできる。
この研究は、2006年にロンドン大学の教授であるジョン・ペンドリー氏とデューク大学のデイビッド・スミス氏が発表した、光をコントロールして物体を透明に見せる器具に関する論文を、ニュースなどが「透明マントを作る」技術として報じたことが話題になった。
SF映画やアニメーションなどに登場するような透明人間を実現する、透明マントや光学迷彩といったことが実現できる他、通常の可視光の波長よりも小さい数nmレベルの微小なものを捉えることができる顕微鏡などが実現可能だという。
過去の研究で作られてきた2次元(平面)でのメタマテリアルは、ある特定方向からの光に対してのみしか左右しなかった。2014年に理化学研究所 田中メタマテリアル研究室の准主任研究員 田中拓男らが3次元(立体)で構成するメタマテリアルを発表し、あらゆる方向の光を制御可能であるとした。
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