金属3Dプリンタ活用3つのハードルと日本のモノづくりの今後:MONOist 2019年展望(1/3 ページ)
金属3Dプリンタ関連の技術開発が急速に進み、海外を中心に製造事例も聞こえてくるようになった今日、その動きに取り残されないよう、従来の考え方や経験にとらわれない仕事をしていくことが、今後はより重要になっていきそうだ。
2013年頃から3Dプリンタの大ブームが起こり、製造業従事者以外の一般層からも非常に注目を集めた。3Dプリント(積層造形)は製造業ではラピッド・プロトタイピング(RP)の一手法として身近な技術であったが、一般層からすれば画期的な新技術に映ったようだ。当時は主要特許の開放による急激な低価格化で家電量販店などで取り扱いが可能になったこともあってか、頻繁にニュースで取り上げられたり、テレビドラマの一シーンに登場したり、エンターテインメントの一部であるかのようだった。その後数年間で「フィーバー」ともいえるほどの盛り上がりは落ち着いていき、本来の製造機としての役割や発展に注目が集まるようになった。
その中で、じわじわと注目度を高めているのが金属の造形物を製作する3Dプリンタだ。上記のブームでは廉価な価格帯で売られていたFDM(熱溶解積層)による専用樹脂の造形機が人気だった。またこのブームを経ながら、3Dプリンタの材料は樹脂と金属共に種類が多様化してきていると共に、チョコレートなど食品系へも広がりを見せた。3D Systems、Stratasysといった海外大手メーカーでは金属3Dプリンタ関連の技術の買収が目立った。
富士経済が2018年1月に発表した調査データによれば、「金属3Dプリンタの世界市場について、2015年、2016年と横ばいできたものの、2017年は622億円で2016年比の124.9%の成長率となる見込み。さらに、2022年には1595億円で、2016年比で3.2倍に成長する」という(関連記事:金属3Dプリンタ市場は世界的には成長傾向、日本は規模が小さく成長も鈍い。
強い特許はあっても強い製品が少ない日本のこれから
3Dプリントの技術自体は日本が発祥(小玉秀男氏が開発)であるといわれ、パナソニックやJSR、ソニー、富士フイルムなど日本のメーカーが重要な関連特許を多数押さえている。それにも関わらず、製品市場で強いのはStratasysや3D Systemsといった欧米企業であり、国際標準についても主導権を握られている現状だ。国内は海外製品を代理店が販売するケースが非常に目立つ。
しかし日本もさすがに黙って指をくわえているわけではない。金属3Dプリンタについては2014〜2018年にかけて日本でも新規参入が相次いだ。特に日本では、ソディックとDMG森精機、ヤマザキマザック、オークマ、松浦機械製作所といった工作機械メーカーが金属3Dプリントと切削加工の複合機に取り組む事例が非常に目立つ。そのような中、三菱電機は2018年11月に金属3Dプリンタのみの装置を披露している。
ミマキやリコーなどの従来のプリンタメーカーも自社製品で新規参入しているが、樹脂3Dプリンタのみである。
日本政府は2014年に国家プロジェクトとして技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)を設立し、大学などの研究機関と民間企業が研究開発に取り組む。金属3Dプリンタの研究については、装置や造形手法と併せ、シミュレーションソフトウェアの研究開発、国際標準化への対応などにも取り組んできた。金属3Dプリンタの研究については2018年度でプロジェクトが終了する予定だ。2019年度はプロジェクトで誕生した技術を用いて各社から日本製の製品を投入していく。
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