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金属3Dプリンタ活用3つのハードルと日本のモノづくりの今後MONOist 2019年展望(2/3 ページ)

金属3Dプリンタ関連の技術開発が急速に進み、海外を中心に製造事例も聞こえてくるようになった今日、その動きに取り残されないよう、従来の考え方や経験にとらわれない仕事をしていくことが、今後はより重要になっていきそうだ。

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コストのハードル

 金属3Dプリンタの代表的手法であるレーザー焼結法「SLS(Selective laser sintering、選択的レーザー焼結)」だが、2014年の3Dプリンタブームのさなかにその特許が失効している(1986年出願:Deckard特許「US 4,863,538」)。当時は「家庭用のデスクトップ金属3Dプリンタが登場するのでは」とウワサする人もいた。さすがに家庭用とはいかなくとも、オフィスユーズについては現実化しつつあるようだ。

 従来の金属3Dプリンタの導入費用は億単位といわれた。ところが最近、「デスクトップ機器」をうたう製品については導入費用が数千万円程度に抑えられる程度にまでコストが落ちている。樹脂の3Dプリンタと同様に金属もハイエンド機とミッドレンジ機といったクラスができつつあるといえる。

 Markforgedは2017年に金属3Dプリンタ「The Metal X」を発表し、国内代理店でも販売している。金属粉を樹脂に閉じ込めたフィラメントを用いて造形する、原子拡散積層造形法という独自手法(ADAM)を採用している。FDM方式で金属と樹脂(バインダー)が混在する状態で造形しておいて、後からバインダー除去装置で脱脂するという仕組みだ。材質はステンレスやチタン、アルミなど幅広く対応する。サポート材は不要で、「設備費用は従来の金属造形プロセスの10分の1」としており、将来は樹脂プリンタ並みのコストで金属造形が可能になるとしている。

 MarkforgedからスピンアウトしたDesktop Metal社も2017年に「Desktop Metal Studio System(Studioシステム)」を発表し、国内代理店でも販売している。The Metal Xと同様に、FDMとデバインダーシステムの合わせ技で造形する。金属粉末を樹脂で固めた棒状の材料を溶かしながら造形する。こちらの方式は「MIM(Metal Injection Molding)」の応用であるとしている。こちらの価格は12万ドル(約1350万円)と開発元から発表されている。

 今後もこのような新技術開発やコストダウンといった大きな動きが活発になることが予想できる。

 一方、従来のSLSやSLM(Selective laser melting、選択的レーザー溶融)方式の装置については、コストダウンの動きよりは、大型化や量産対応といった機能拡張が積極的に進んでおり、ハイエンド設備としてのポジションを保つ方向性が強そうだ。

 予算が限られたユーザーについては今後も、レンタルサービスの他、マテリアライズやDMM.makeといった金属3Dプリントに対応するサービスビューロを経由して利用していくことが中心になるだろう。今後は、このような金属3Dプリントサービスの提供機会の増加も期待できる。


金属3Dプリンタ「Studioシステム」(出典:アルテック)

難易度のハードル

 金属3Dプリントの難易度は樹脂と比較して各段に高く、たとえ今すぐ装置本体が家電並みに安くなったとしても、DIYを目的とする個人では到底扱えないものかもしれない。経験から熱変形を予想して造形条件をセットする、従来の金属3Dプリントのスキルは非自動化の領域が多くて属人的であり、「匠の技術」とも言われてきた。

 現在は新技術により、変形量をなるべく少なくするなど装置開発面からの大きな改善の動きが見られている。装置付属のソフトウェアにおいてもプロセスの統合管理や自動制御などの機能が次々と開発されてきている。

 2017〜2018年にはMSCソフトウェアやアンシスなど大手CAEソフトウェア側から、金属3Dプリントに関するユーザーの障壁をシミュレーションで取り除こうとする発表が見られた。ただし現時点ライセンス価格はそれなりの高さで、解析できる方式も限定的であるので、今後の進化に期待がかかる。

 さらに同時期には3Dプリントアシスト機能や、トポロジー最適化やジェネレーティブデザインなどを各社のミッドレンジ3D CAD(ライセンス価格で100万円前後)に実装する動きがあったことを考えれば、今後は使い勝手面でも、金属3Dプリントに、ユーザーがこれまでよりも手が届きやすくなることは予想できる。


解析結果と変形の例(出典:アンシス・ジャパン)

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