金属3Dプリンタ活用3つのハードルと日本のモノづくりの今後:MONOist 2019年展望(3/3 ページ)
金属3Dプリンタ関連の技術開発が急速に進み、海外を中心に製造事例も聞こえてくるようになった今日、その動きに取り残されないよう、従来の考え方や経験にとらわれない仕事をしていくことが、今後はより重要になっていきそうだ。
発想のハードル
樹脂はいくら耐熱性のものがあるといっても金属と比べてしまえば融点は低く、強度もはるかに劣る。金属で自由自在な形状が作れるということだけでもメリットは多い。金属3Dプリンタについていえば、従来の金属加工では複数部品で構成せざるを得ない製品が単品か数点の部品で作れる、強度を損なわずに軽量化しやすいといったメリットがある。また従来手法にとらわれないモノが作れるようになるため、過去の世界には存在しようがなかった新しい製品やビジネスが作れるといった可能性もある。
一方、金属による3Dプリントは樹脂以上に量産のハードルが高い、造形時間がたくさんかかる、造形が失敗しやすい、材料費がとにかく高いといったデメリットも現状はある。金属3Dプリンタの導入と活用においては、メリットとデメリットの両側面から考慮し、強力な意義を見いだせるかどうかが成功のカギだ。
金属3Dプリンタの普及において大事なのは、「使用目的が的確に見いだせるか(発想)」であるといわれる。ある新技術が話題になれば「何に使うか」よりも「とにかく新技術を導入して何か考えろ」となってしまうこともよくある。周囲の様子をじっくりうかがいながら自らの動き方を決めるような、日本国内のユーザーの性質も迅速な普及のネックになりそうだ。
金属3Dプリンタ関連の技術開発が急速に進み、海外を中心に製造事例も聞こえてくるようになった今日、その動きに取り残されないよう、従来の考え方や経験にとらわれない仕事をしていくことが、今後はより重要になっていきそうだ。
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