3Dプリンタの“脱・試作”は日本式モノづくりでこそ生きる――GE 刈羽工場:メイドインジャパンの現場力(5)(1/4 ページ)
“夢の製造装置”として期待を集める3Dプリンタ。しかし、描いた夢とは裏腹に、いまだに20年前から定着する試作品用装置の域を抜け出せずにいる。こうした中でいち早く金属3Dプリンタでの最終製品製造に取り組む工場がある。新潟県刈羽郡刈羽村のGEオイル&ガス 刈羽事業所だ。
メイカーズムーブメントなどで3Dプリンタがブームを巻き起こしてから約3年が経過した。「立体物を何でも自由に造形できる」という期待とともに、特許切れによる3Dプリンタそのものの低価格化、無償CADなどCADソフトの普及拡大など、さまざまな後押しがあり、家庭用など、従来は導入が考えられなかった領域への普及が広がっている。一方で、製造業の中では、20年以上も定着が進んでいる試作環境での利用に加え、最終製品の製造での活用が期待されていた。ただ、現実的にはこちらはまだまだこれからという状況で、多くの課題が残されている。
特に金属を素材に使った3Dプリンタによる最終製品製造は、金属加工の負担の大きさや制約などから、大きな期待を集めているが、現実的にはあまり進んでおらず、現在は製造用部材である「金型製造」で使われるケースにとどまっている状況だ。
こうした中で金属3Dプリンタによる最終製品製造に取り組み成果を残している工場がある。GEグループの工場である、GEオイル&ガス 刈羽事業所(日本ドレッサー 刈羽事業所、以下刈羽事業所)だ。
GEが進めるアドバンスト・マニュファクチャリング
GEでは、製造業としての立ち位置を明確にしつつ、新たな発展を目指すために「Future of Work」として3つの取り組みを進めている。IoT(Internet of Things、モノのインターネット)を活用し、製造業でありながらデータを活用したサービスビジネスを展開する「インダストリアル・インターネット」が大きな注目を集めているが、その他の2つとして挙げられているのが、オープンイノベーションなど社内外問わずに効果的に人々の力を活用する「グローバル・ブレイン」と、次世代の製造手法の確立を目指す「アドバンスト・マニュファクチャリング」である。
アドバンスト・マニュファクチャリングの取り組みの一環としては既に、金属3Dプリンタ企業であるモリス・テクノロジーズを買収し、同社の金属3Dプリンタを使って生産した航空機用部品を出荷。3Dプリンタで製造した部品を搭載した航空機が既に試験飛行で飛ぶようになったとしている。
これらの新たな製造技術確立をGEグループ全体で目指す中で、利用用途の拡大に向けた公募が社内であり、ここで手を挙げて、刈羽事業所での金属3Dプリンタへの取り組みが始まったという。
刈羽事業所 取締役で事業所長の左近充光明氏は「導入を決めたのは私が事業所長を務める前だったが、金属3Dプリンタそのものには可能性を感じていた」と述べる。
「さまざまな捉え方があるとは思うが、現在の生産手法で作ることができるものを作っていては、当面は採算が取れない。ただ、3Dプリンタは複雑な形状のものや中空部分があるようなものを一度で製造できたり、一体成形で溶接の手間を省けたりするなど明確な利点もある。3Dプリンタだからできることというものを追求することが重要だと考えた」と左近充氏は語る。
しかし、現実的には金属3Dプリンタで最終製品を製造するのは、「かなり難しく、一筋縄ではいかなかった」(左近充氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.