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レクサスの安全システムをトヨタ車で民主化、ハード変更せずにコストを抑制安全システム(2/2 ページ)

トヨタ自動車は2020年2月3日、東京都内で記者向けに説明会を開き、運転支援システムパッケージ「Toyota Safety Sense」や今後の安全システムの展開を発表した。

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ドライバーモニタリングシステムなしで状態監視

 ドライバー異常時の停車支援システムは、一定時間の間、アクセルやブレーキ、ステアリングが操作されない場合にドライバーの異常と判断する。システムからの警告にドライバーが反応しない場合は、ホーンを鳴らしながらハザードランプを点灯させ、周辺車両の異常を知らせながら減速し、車線内で停車する。停車後は緊急通報システムのヘルプネットに自動で接続し、救命要請を手配する。

 コストを抑えるため、ドライバーモニタリング用のカメラは採用しなかった。また、路肩に向けて車線変更するような制御も行わず、車線内で停車する機能とした。「異常時の停車支援は可能なら路肩に寄せたいが、たくさんのセンサーを使った周辺環境認識が必要になる。そのため、普及にはハードルが高い。しかし、クルマが暴走するよりは、停まることが重要という国土交通省の認識もあり、車線内での停車で製品化する」(葛巻氏)。


スピードマネジメント機能付きレーダークルーズコントロール&LTAは従来よりも安定して快適に走行できるよう改良した(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 車線維持支援とクルーズコントロールを組み合わせた「スピードマネジメント機能付きレーダークルーズコントロール&LTA」は、カーブの大きさに合わせてあらかじめ減速し、カーブ走行時の横Gを一定に保ちながら安定して快適に走行できるようにした。

 「これまで、センサーが実際に見えている距離の長さと、車線だと判断できる距離の長さには差があった。レクサス車は地図データを使って車線を見ていたが、Toyota Safety Senseではレクサス車の走行データをベースにアルゴリズムを開発し、地図データを使わずにその差を縮めることができた」(葛巻氏)

新機能が続々と製品化

 この他にも、2020年はToyota Safety Senseの新技術が市場に出てくる。間もなく全面改良される「ヤリス」には、右折時の直進車両や右左折時の横断歩行者の検知に対応した自動ブレーキが搭載される。これまでは直進方向の歩行者や車両を検出していたが、ソフトウェアの変更により、ステアリング操作から曲がる方向を予測し、予想進路上にいる歩行者や車両を検知できるようにした。右左折時の検知は夜間への対応も進めている。

 また、新型ヤリスには、高度駐車支援システムも搭載する。これまではステアリング操作のみシステムが制御し、ドライバーはアクセルとブレーキを操作する必要があったが、今回はステアリングに加えて、アクセルとブレーキもシステムが制御する。ドライバーが駐車スペースの横に停車してスイッチを押すと、カメラとソナーが検出したスペースに自動で駐車する。ドライバーが行うのは周辺の安全確認とシフトチェンジのみだ。このシステムは新型ヤリスが初採用となる。

障害物がない状況での踏み間違いも防ぐ

 高齢者や運転初心者に多いペダルの踏み間違いへの対応も強化する。これまでトヨタ自動車では、超音波ソナーを使った「インテリジェントクリアランスソナー」を展開。加速の抑制とブレーキ制御で、踏み間違いによる壁などとの衝突回避支援機能を提供してきた。2018年12月には、販売済みの車両にも後付け可能な踏み間違い加速抑制システムを発表。2020年2月時点で12車種に対応している。

 2019年12月の受注数を基にすると、インテリジェントクリアランスソナーの装着率は83%に上るという。その効果も表れており、トヨタ車6万3000台の事故データを分析すると、インテリジェントクリアランスソナー搭載車は非搭載車と比べて踏み間違い事故が約7割低減されたという。

 葛巻氏は「インテリジェントクリアランスソナーで踏み間違い事故は7割減らせたが、まだ3割残っている。インテリジェントクリアランスソナーでは避けられない事故をカバーする技術が必要だった」と説明。そこで、前方に障害物がない場合の暴走も抑止する急アクセル時加速抑制機能の開発に至ったという。


踏み間違い推定アルゴリズムの概要(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 急アクセル時加速抑制機能の開発に当たっては、DCM搭載車から収集した走行データを活用。数千台分の踏み間違いのデータから、車速、アクセルペダルの操作速度、踏込み量、上り坂かどうか、直前のブレーキ操作の有無、右左折中かどうかなどを基準に、踏み間違いを判断するアルゴリズムを開発した。

 これを基に、周辺監視センサーが障害物を検知していない場合でも踏み間違いに対応できるようにした。「普段の操作に影響を及ぼさないことを重視して開発したが、この機能が必要な人もそうでない人も便利に使えるよう、キーによって切り替え可能なシステムにしたいと考えている」(葛巻氏)。既に後付け用の踏み間違い加速抑制システムを購入したユーザーに向けては、安価に機能をアップデートできるよう、対応する予定だ。

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