人々の移動を助ける会社「モビリティカンパニー」を目指すトヨタ自動車。「モビリティサービス・プラットフォーム」の整備や、車載通信機の本格的な普及など、モビリティサービスの展開に向けた施策の狙いを聞いた。
トヨタ自動車が「自動車メーカー」から脱却しようとしている。人々の移動を助ける会社「モビリティカンパニー」を目指すことをさまざまな公の場で繰り返し宣言している。モビリティカンパニーとなるため、「モビリティサービス・プラットフォーム」というサービス基盤を整備している他、車両のデータを収集するための車載通信機を本格的に普及させる。
トヨタ自動車の矢継ぎ早の施策が何を意味するのか、コネクティッドカンパニー コネクティッド統括部長の山本昭雄氏に聞いた。
ITmediaテクノロジー6メディア総力特集「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像のメイン企画として本連載「つながるクルマ キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのように「「つながるクルマ」を捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、モビリティの未来像の指針をあぶり出します。
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MONOist 2018年夏に「クラウン」がフルモデルチェンジを控えています。2017年の東京モーターショーでは車載通信機(DCM、データコミュニケーションモジュール)を全車標準装備にすることも発表しました。
山本氏 搭載する機能の詳細はまだ説明できないが、新型クラウンを皮切りにテレマティクス保険を大々的にやっていきたいと考えている。DCMによって、位置情報だけでなく、センサーがいつ動作したか、走る曲がる止まるの挙動がどうだったかが全て分かるようになる。
テレマティクス保険は、安全運転を楽しみながら得をするというものだ。運転にスコアをつけ、月々もしくはドライブのたびにレポートを出す。自分でも体験してみたが、初めは点数が出るのがうっとうしかった。しかし、成績が上がると気分がいいし、もっと上手に運転しようと工夫するようになる。その延長に、保険料の割引がある。
単純に新しい保険を提供するのではなく、運転の行動様式を変えて交通事故をなくしていきたい。もっとエコに、安全に運転しよう、とみんなが考えれば交通事故が減っていく。お客さま、保険会社、われわれ、社会全体……皆にとってプラスになる取り組みにしたい。
「プリウスPHV」にもDCMを搭載しているが、全車標準装備ではないし、販売台数も多くはない。量販モデルでのスタートが新型クラウンだ。利用できるサービスはプリウスPHVよりも拡充していく。
MONOist クラウンの購買層は平均年齢が高く、販売店への入庫率も高いです。クラウンのユーザーとコネクテッドカーの親和性をどのように見ていますか。
山本氏 クラウンのユーザーは年齢層が高いが、テレマティクス保険は合っていると考えている。反対に、若い世代に「安全でエコな運転を楽しむ感覚」を訴えても響かないのではないか。Fun to Driveのためのサービスも当然考えている。クラウンはあくまで量販コネクテッドカーの「第1弾」だ。
DCMの搭載によってクルマの状態が把握できるようになり、販売店とお客さまの接点も変わる。点検を6カ月や12カ月で画一的に実施するのではなく、乗り方に合わせて提案していく。乗り方や使い方は人によって全く違う。使用頻度の高いお客さまには3カ月で点検を提案したり、あまり乗らないお客さまでもバッテリーが上がりそうだと分かれば早めに連絡してお店に来ていただいたりすることが可能になる。
販売店もどんなお客さまをどのようにフォローすべきか分かるようになる。お客さまはディーラーからの連絡で煩わしく思うことなく、ちゃんと見てもらっている安心感が得られる。販売店の働き方が変わっていく。
テレマティクスサービスやITS(高度道路交通システム)サービスはこれまでにもやってきたが、位置情報が中心で、ナビゲーションシステムというメディアからサービスをどう提供するかに主眼を置いていた。位置情報にDCMで得た挙動のデータが加わることでサービスの幅が広がる。モビリティサービス・プラットフォームを使った、現行のテレマティクスサービスである「T-Connect」以上のサービスに広がっていく。
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