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ディープラーニング技術を用いて部品の検品を自動化する実証実験:製造IT導入事例
ABEJAが武蔵精密工業と協業し、ディープラーニング技術を用いて四輪車用部品の検品を自動化する実証実験を実施した。その結果、自動化は難しいとされてきた検品工程において、目視による検品と同等の精度を持つ学習済みモデルを構築できた。
ABEJAは2018年2月19日、武蔵精密工業との協業により、ディープラーニング技術を用いて四輪車用部品の検品を自動化する実証実験を実施したと発表した。
武蔵精密工業では工場の自動化に取り組んでいるが、検品工程においては熟練作業員の能力によるところが大きく、自動化に関して課題があった。
実証実験では、四輪車用の部品であるベベルギヤの画像データをディープラーニング技術によって解析し、良品と不良品を検出する学習済みモデルを構築した。
この学習済みモデルには、両社の工夫が生かされている。例えば武蔵精密工業では対象物をカメラで的確に捉えてデータを取得する環境を構築し、ABEJAは「AutoEncoder」(自己符号化器)などの複数の手法を組み合わせて、良品のデータのみから不良品を判別する方法を確立した。
ベベルギヤは完成品の精度が高いために不良品の発生が非常に低く、目視による検品工程を自動化するのは難しいとされていたが、2017年6月から10月までの約4カ月間の実証実験で、人の目視による検品と同等の精度を持つ学習済みモデルを構築できた。
両社は今後、実証実験で構築した学習済みモデルを調整し、さらなる精度向上を図る。2018年度から武蔵精密工業の工場内で試験的な運用を開始する。
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