スマートフォンの音声アシスタントと雑談したことがある人は20歳代で46%:車載情報機器(2/2 ページ)
ニュアンス コミュニケーションズ ジャパンは、日本国内の自動車保有者1100人を対象に実施した音声認識機能の利用調査結果を発表した。車載情報機器の音声認識機能に対する総合的な満足度は向上しているものの、音声認識機能の利用者は自動車保有者の2割弱にとどまることが分かった。
音声認識への満足度は
カーナビゲーションシステムの音声認識機能を利用するという回答者に対して、機能に対する満足度を尋ねた。その結果、「大変満足」「まあ満足」の合計が8割弱に達することが分かった。前回の調査から、「大変満足」「まあ満足」の合計は約14ポイント増加した。
カーナビゲーションシステムの音声認識機能を利用する場面は、住所、目的地検索のためのジャンルや施設名、目的地の電話番号など、文字数が多い入力を行う時が多かった。音声入力を利用する利点として、両手がフリーになる、運転に集中できる、目的地の設定にかかる時間が短くなるなどの項目が挙げられている。
一方で、不満も寄せられている。カーナビゲーションシステムの設計に対しては、操作をもっと簡単にしてほしいという声や、認識エラー時の操作や、音声入力で認識される言葉の少なさなどに改善を求める回答が集まった。
村上氏は、カーナビゲーションシステムの音声認識機能に対する不満は、自然言語理解や音声処理の高度化によって解消できると説明した。例えば、音声入力で認識される言葉の少なさについては、自然言語理解によってさまざまな表現や曖昧な言葉に対応可能だという。また、雑音が多い環境での音声入力や、アナウンスと発話が重なった場合には、高度な音声信号処理によって不満を低減できるとしている。
音声認識機能のビジネスモデルに対する不満も回答に挙がった。音声認識機能の利用が有料である場合や、一定期間後に料金が発生するケースが該当する。「これは、スマートフォンの音声認識機能が無料で使えることによる影響だろう。クラウド型の音声認識の普及が車載情報機器で進みにくいのは、課金の受け入れられ方が要因の1つになっている。」(村上氏)。
ニュアンス コミュニケーションズでは、音声認識のミドルウェアの提供にとどまらず、ユーザーインタフェースの設計まで同社で行いシステムとして納入するビジネスを強化している。自動車メーカーの開発工数削減に貢献する狙いで、日米欧で対応するエンジニアを増やしている。また、日系自動車メーカーの国内向けメーカーオプションのカーナビゲーションシステムで、音声認識機能がシステムとして採用された実績もあるという。
運転中に使いたいアプリ、トップはライン
スマートフォンのアプリに焦点を当てた調査も実施した。運転中にカーナビゲーションシステムの画面上で使いたいスマートフォン向けアプリに関する質問では、複数回答の結果、ラインが3割と最も多く、天気予報やメール、ニュースなどが1割前後で続いた。
運転中に音声入力だけで行いたいスマートフォンの操作にも、受信したメールの読み上げやメールの作成、SNSのメッセージの確認と返信を挙げる回答が上位になった。
村上氏は、ラインをカーナビゲーションシステムの画面上で使う場合の課題として、スタンプの活用を挙げた。「ラインにはスタンプの気軽なやりとりも含まれている。画面上を注視してスタンプを選ぶ形にはできないので、文字だけでスタートするか、スタンプの名称を読む形で音声入力でもスタンプを送信できるようにする必要がある」(村上氏)。
運転中のメッセージ作成や送受信に対するニーズが高まっている結果だが、北米や欧州では既に、音声入力でのメッセージ作成機能が搭載されているという。
今後、車載情報機器向けの重要な開発テーマとして力を入れているのは、人工知能技術の活用だ。既に自動車メーカーにプロトタイプを提案しており、「駐車場やレストランなどを探すコンシェルジュのような機能から製品化される見通しだ。他にない機能をいち早く搭載したい自動車メーカーが、特に提案に興味を示している」(村上氏)。
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