今後の日本企業の成長モデルには5つのシフトが求められるという。1つ目は業界再編を通じた戦略的ポジションの確立だ。日本国内の業界再編やエコシステムの再構築により、グローバルで勝つことができる代替困難なポジションを目指し、日本が持つ技術力や顧客基盤を束ねて、競争力とレジリエンスを同時に高める必要がある。
2つ目は経営資源を取り込むグローバルモデルへの転換だ。優れた製品や技術をグローバルに展開する企業から、グローバルで人材/技術/資本を取り込み、顧客や社会課題を解決する企業に進化する必要がある。
3つ目はAI/フィジカルAI活用による生産性の向上である。一部の大手企業だけではなく、中小企業やサービス産業を含む経済全体へAI活用を広げていき、人手不足問題への対応と生産性向上を同時に実現し、日本のモノづくりを新たなステージへ押し上げる必要がある。
4つ目はスタートアップを育む企業エコシステムの構築だ。100社のユニコーン企業を生むという国の目標を達成するためにも、スタートアップが増える社会を目指すとともに、大企業や投資家、大学、人材が連携し、課題解決型の新事業を継続的に生み出すことにより、世界へ展開するエコシステムを構築することが大事となる。
5つ目は新陳代謝と価値創造を両立するガバナンスだ。上記の4つのような変革を推進するために、経営判断と資本配分の仕組みを変え、過去の延長線上にある事業や企業については、果断的な再編や退出を検討する必要がある。一方、将来の競争力を支える領域には長期的な投資を続け、新陳代謝と長期的価値創造を両立させることが求められるという。
岩谷氏は「企業価値を上げるという取り組みは非常に進んできており、株主還元にトレンドが向いている。PBRを1倍以上に上げたり、企業価値を向上させて自社株買いや配当による適切な株主還元を行ったりすることは、引き続き大事なテーマになるといえる。一方で、これだけを進めてしまうと、企業の中の設備投資やR&D、人材の確保といった将来の投資が小さくなってしまう。そのため、企業価値を上げて株主に還元する部分と、将来に対する投資を両立させることが大事であると捉えている」と述べる。
会見の後半では、最新レポートの内容を基にパネルディスカッションが行われた。その際にフィジカルAIがテーマとして挙げられた。
近年、フィジカルAIという言葉がバズワードとなり、グローバルでさまざまな動きが生まれている。日本政府もフロンティアモデルのキャッチアップに力を入れており、今後の動向に注目が集まっている。
このような中、日本におけるフィジカルAIの立ち位置について、マッキンゼー・アンド・カンパニー パートナーの工藤卓哉氏は「日本の勝ち筋としては、きちんと構造化してアプローチしていく必要があると思っている。VLM(視覚言語モデル)などの基幹モデル/認知モデルをまず構築して、その後マルチモーダルモデルからVLA(Vision Language Action)へと反転させる戦略が政府のもとで引かれているが、正直ベース、日本は完全フロンティアモデルを展開している各社と比較してVLMの領域は完全に遅れているといえる。そのため、勝機としては、VLAの教育になるのかなと思っている」と語る。
フィジカルAIはロボットを動かした時の状態変化のデータなどが必要となるが、この部分に対し、フィジカルトークンデータを生産できる基盤を日本産業全体が持っていることは大きな勝ち筋の1つといえる。
また、フィジカルAIの導入に当たり、安全性が重要となる。工藤氏は「安全制御の部分で非常に高い品質を持つ日本の産業全体がエッジ推論領域に取り組むことで、勝ち筋が得られるのではないかと考えている」と述べた。
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