キオクシアは、フラッシュメモリだけでなくコントローラーを統合したSSDの開発も行っている。同社 SSD事業部 SSD応用技術統括部 技術統括部長の濱田誠氏は「AIデータセンターへの投資額は7兆米ドルまで拡大している。これは各国のGDPと比較すると、米国と中国に次ぐ金額で、ドイツや日本を上回っている。そして、AIデータセンターで扱われるデータで急増しているのがLLM(大規模言語モデル)などの推論処理だ。推論処理向けに用いられるSSDの需要も大きく拡大している」と述べる。
キオクシアは、AIデータセンター向けのSSDを、求められる容量と性能に応じて「アーカイブ」「大規模データ取り込み」「学習&推論」「NVIDIA Storage-Next」の4つに分けている。
まずアーカイブは、容量密度の向上が頭打ちになっているニアラインHDDを代替する用途であり、求められるのは超大容量とシーケンシャルアクセス性能だ。
大規模データ取り込みでは大容量化とランダム読み出し性能が求められる。「LC9シリーズ」は業界初となる245.76TBモデルを実現しており、デル・テクノロジーズのサーバ「PowerEdge」向けに、サーバラック1段に40個のSSDを組み込むことで9.8PBのストレージ容量を実現した。なお、このLC9シリーズはアーカイブ向けの製品としても展開して行く予定だ。
学習&推論では高い総合性能と耐久性が求められることから、先述した第10世代BiCS FLASH TLCを採用した「CM10シリーズ」を提案していく。AIデータセンターの冷却システムは空冷から液冷へ移行する段階にあり、CM10シリーズも液冷に対応している。既に一部顧客向けにサンプル出荷を始めているという。
SSDにおいて性能を最も追求しているのが、NVIDIA Storage-Nextに対応した製品である。NVIDIAが主導するコンソーシアムであるNVIDIA Storage-Nextイニシアチブでは、GPUからSSDに直接アクセスすることで高価なHBMの容量が実効的に増えたかのように扱えることを目指しており、SSDには高いランダムリード性能に加えて細粒度でのデータアクセスが求められる。
そこで、キオクシアは、CXLメモリモジュールにも用いているXL-FLASHを搭載する「GP1」を開発した。読み出し単位は、一般的なフラシュメモリが4KBなのに対して8分の1の512Bになっており、ランダムリード性能は10.3MIOPS(I/O毎秒)を実現した。なお、NVIDIA Storage-Nextでは100MIOPSの実現を目標としており、キオクシアは2028年に第3世代XL-FLASHを用いて実現したい考えだ。
また、キオクシアは、AIが扱うデータのトークン化と、AIデータセンターの要件としてトークンを処理するためのコストと速度が求められることから、過去に計算したトークンを再利用するための「コンテキストキャッシュ」の需要が拡大すると想定している。「例えば、GPUなどAIデータセンターの構成を変えることなくコンテキストキャッシュを追加するだけで、消費電力が2〜3%、コストが10%増えるものの、1秒当たりのトークン発行速度を5倍にできる」(濱田氏)という。
このコンテキストキャッシュ向けのSSD製品が「CM9シリーズ」だ。NVIDIAがコンテキストキャッシュ向けに策定したNVIDIA CMXに対応している。さらに、大規模データ取り込み向けで紹介したCM10シリーズもコンテキストキャッシュへの対応を予定しており、コンテキストキャッシュのさらなる需要拡大に応えていく構えだ。
濱田氏は「AIデータセンターはフラッシュメモリとSSDに新たなビジネスチャンスをもたらした。フラッシュメモリを発明したキオクシアとして、この機会を着実に捉えていく」と述べている。
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